塔に足を踏み入れた時、遠くから鐘の音が聞こえた。
塔の内部はまるで日本家屋のようだ。 畳張りの床に、障子で仕切られたいくつもの空間。
家具らしきものは見当たらず、まるで思いつくままに作ったような不恰好さを見せている。
ここは人の住む場所じゃない。 だれかが実在の塔をもとに見よう見まねでつみあげた、お飾りの塔。
白亜の街と同じように、ここにもまた人の気配はなかった。
何階建てなの~、この塔。 もう結構のぼってるのにまだ全然上に進んでる気がしないよー・・・。
階段を上りきったところで、花帆がぼやいた。
うーん。 このペースだと、まだまだ最上階にはつかなそうだね。
どこにもご飯おいてないしー。 ここには厨房とかないのかな。
なさそう、だよね。 この塔、実用性がないっていうか、生活感がないっていうか・・・。
ほんと、最近のプラモデルの方が凝ったつくりしてるよね。
そうかも。 小さいころに砂のお城ってつくらなかった?
つくったつくった! 水の量が難しくて、あたしいっつも途中で崩しちゃうんだよね~。
もしも砂のお城には入れたら、こんな感じなのかも。 外側と雰囲気ばっかりで、機能が伴ってないよね。
うーん、確かに。
塔はまだまだ続いていく。 広間を抜けて階段を上る。そしてまた広間を抜けて、階段を上っていく。
もしかして、さ・・・。
途中の階にあった手紙を見逃したりとか、してないよね・・・。
それは・・・。
・・・・・・。
あ~~~~!
考えても仕方ないよねっ! とにかくのぼるしかないか・・・。
うんっ! がんばろうよ!
もくもくと塔を上っていく。 広間、階段、広間、階段、広間、階段、広間、階段・・・・・・。
はぁ・・・はぁ・・・。
はぁ・・・はぁ・・・。 花帆、だいじょうぶ・・?
そっちこそ・・・・
さすがに、これは体力的につらい。 二人そろって息が上がってしまう。
はぁ・・・休憩に、しようか・・・。
さんせー・・・。
たたみの上に花帆が寝ころんだ。 大きく足を開いているのを見ると、ホットパンツがうらやましい。
今何階なんだろう・・・。 このまま上り続けるのは厳しいかも。
そうだねえ。 でも、普段より疲れてないかも。
どういうこと?
普通これだけ階段をのぼればもう無理だと思うんだけど、少し休めばまた頑張れそうじゃない?
そう言われてみればそうかも。
あっ!
どうしたの?
そういえば・・・とか、行きたくならないかも。
・・・? いまなんて言ったの?
だ~か~ら~・・・。
その、ト、トイレとか・・・。
花帆。 恥ずかしいなら言わなくてもいいのに。
だって・・・。 もしかしたら祐美が気付いてないかなーって思って・・・。
でも、そういえばそうだよね。 あたしはそんなにお腹も減らないし、トイレに行きたいとも思わなかったし。
時間がたってないことが影響してるのかな。
じゃあちょっと便利かも! ほら、ここにいれば運動し放題、自然と食事制限もできるでしょ。
それは身体に悪そうかも・・・。 花帆はお腹すいちゃうんでしょ?
そう言われれば・・・。
そうだった!
よし。十分休憩したし、そろそろ行こうか。こうやってお話しながら歩けば疲れを感じないのかもね。
なるほど。 よし、どんどんしゃべっちゃうよー!
足もちゃんと動かしてよね。






