お城の中にはたくさんの部屋があった。
寝室であろう大きなベッドのある部屋。大きな厨房。ソファと暖炉の談話室。石造りの浴室。
地下に隠された牢獄。処刑部屋。城の主のために贅の尽くされた居室。書斎。たくさんの部屋があった。
どの部屋にも直前まで人がいたような物があった。調理中の食材や、乾ききらない鮮血のような・・・。
だが城のどこにも人の影は見つからない。
なんで地下にこんな部屋が・・・。
他の部屋よりは落ち着いた雰囲気みたいね。今でいう、会議室みたいな感じかな。
みて、あそこになにかの紙がある。 羊皮紙・・・? あたしたちの使ってる白い紙とは別物だね。
・・・なにこれ。 日本語じゃないし、英語でもないよね。
ん・・・。 ちょっと待って、読めるかも・・・。
ええ?
柱の話が出た時といい、この紙のことといい、花帆は何かに気付いてるのかもしれない。
・・・・・・。
ん、わかったよ。 だいたい読めた、と思う。
すごい、もしかして花帆ってマルチリンガルな人?
んーっと、そういうわけじゃないんだけどね。
この文章は筆記体の英語で書かれてるの。 文字自体が鏡文字になってるし、訛りとか省略も多いみたい。
日本語にすると、こんな感じかな。
花帆が、翻訳した内容を読み上げ始めた。
たどり着いた誰かに宛てて。 これは私からあなたたちへの助言です。もしなにも知らずに巻き込まれたのなら、参考にしてください。
ここはあなたたちのいた世界ではありません。元の世界に戻るには、いくつかの手順をたどる必要があります。
まずはこの城のどこかにある、黄金のインクを手に入れることです。おそらくは王の居室にあるでしょう。
手に入れたら、今度は北西の街に向かってください。そこで同じような手紙を見つけてください。
喜びなさい。神々があなた方を慈しんでいらっしゃることを。
ではまた、次の街で。
これって・・・。
うん。 そのまんま、元の世界への戻り方みたいだね。
よかったあ・・・。 すこし安心したよ。 この手紙の通りにすれば戻れるんだね・・・よかったぁ・・・。
・・・・・・どうしたの?
ん。 まあ、なんでもないよ。
まずは、黄金のインクっていうのを探しに行こうよ。王の居室って、わかる?
っていうか、入り口の戻り方もわからないかも・・・。
あちゃー・・・。






