ヒャッハー! この桜の木はアタイのもんだぁーっ! ウッキキー!
野生に帰りすぎだろ、このバカ女め。
くすん……バカって言われちゃった。
まあまあ。今日はせっかくの課外授業なんだから、みんな楽しくしようよ。ね。
そうだね。タケルくん、さっすがー。
タケルがそう言うなら仕方ない……この俺も、同級生の仲良しごっこにつきあってやるとするか。
えへへ。ありがと。
ば、ばかっ……お、男が、そんな……かっ……か、かわいい笑い方をするな。
うひょーっ! サンダーキーック!
のごぁっ……!
なんか、すごい音がしたけど……大丈夫かな?
心配いらないよ。男なんて、そこの川にでも放り込んでおけばいいのよ。
あの……ボクも一応……男なんだけど……。
ほら、タケルくんはこっちこっち。みんなで女子会開いてガールズトークしちゃおうよ。オムライスなんざ食えるかー、とかさ。
いや、だから……あの……。
じつはこっそり、窓辺屋のオレンジクラスターシュークリームも買ってきてあるんだなぁ。
ええっ……!
あの1日限定50個しか売ってなくて、ひと口かじるとお口の中でサワヤカなオレンジフレーバーがはじけちゃう……。
あの窓辺屋のクラスター爆弾ってみんなが噂する、あの……あの……。
そのオレンジクラスターシュークリームだぁ!!
甘いよ~。おいしいよ~。ほっぺた落ちてトロけちゃうよ~。オスロ・プロセスでも止められないよ~。
ほ~ら、ほら。こっちにおいで~。
クゥ~ン……。
やれやれ……。
タケルのやつめ、順調に女子力を高めているようだな。
それこそが──魔法少女の力の源。
男児の乙女心から生まれる女子力こそが、魔法少女の高い戦闘能力を維持するために必要なのだ。
普通の魔法少女であれば、たった一度の戦闘で魔力を枯渇させてしまい、二度目の変身すらできなくなることもめずらしくはないが……。
タケルの女子力は、FPSの銃器で装弾数が∞って書かれているぐらいに満ちあふれている。
いったい、この無尽蔵の女子力はどこからくるのだ……。
タケル……今はおまえの力に頼らせてもらうぞ……。
なんだよ、課外授業とかってのは……ようするに遠足かよ。ったく……つまんねーな……。
こんなだったら、タケルたちの学年がいるところと、同じ場所でいいだろうがよ……。
おまえ本当に弟好きだねー。
ち、ちげーよ。バカッ!
た、タケルのやつが頼りないから、心配……心配してるだけだっ。
そーんなこと気にしなくてもよ。男なんてのは、勝手に育つもんなんだよ。
そんなに心配なら、弟と結婚しちゃえば?
け……けっ、結婚?
タケルと……結婚かぁ……。
タケルなら……料理も、掃除も、洗濯も……みーんなやってくれるから、いい奥さんになってくれるかなあ。
あの……お姉さん? どんだけマジなんすか……。
まったく……なんて乱暴な女だ……。
暴力的な女は最低だな。やはり女性は優雅で、おしとやかなタイプが一番だ……。
古風な大和撫子タイプとか……そういうおとなしい感じが……。
デーンデーン、デーン♪
ぱぎょっ。
だがまあ、おとなしい中にも芯を感じさせる。やはり、そういう性格でないと……。
ぱぎょぎょぎょ。
ええい! さっきからぱぎょぱぎょうるさいっ……って、うわぁーっ!!
ぱぎょーっ!!
おいし~い。ねえねえ、これ本当においしいよねえ。すご~い。感激しちゃう~。
でしょ~。もー、並ぶの大変だったんだから~。
自家製オレンジピールの苦味をわざと残して、アクセントにしてるところなんか最高だよねえ。
オレンジピールってなぁに?
このオレンジクリームの中に入ってる、小さなオレンジ色のツブツブがあるでしょ。
うんうん。
これね、オレンジの皮を使った砂糖菓子なんだよ~。すごいでしょ~。
そうなんだ! 知らなかったよ~。
タケルくんって物知りだね~。
そんなことないよ~。でもこれよく買えたね。並ぶの大変じゃなかった? すごいよね~。
クマだぁー!
クマがっ……クマが暴れてるー!
大変だぁ! また事件かも?
何があったんだろう……?
……………………。
あれ? 時間が止まってる?
説明しているヒマはない!
えっ……?
今回ご用意いたしましたのは、このダンボール。
魔法の国からみかんを詰めて三千里。
やってきました人間世界。長く旅したダンボール。ふるさとに残した母を思い出しては、枕を涙で濡らす夜もあったでしょう。
泣かせる話だねえ。
そんなダンボールが、心をこめて歌います。歌は──魔法少女、変身!
え? あっ、ちょっと……そ、そんな……ダメぇーっ!
ホンダラホジャマカ、ホーイホイ♪
爆誕! 魔法少女サンダー☆タケル!
タケル! あそこでデビルベアーに人が襲われているぞ!
(このアクセサリー、もうちょっとかわいいのにならないかなぁ……あとお洋服も……)
タケル!
あ。はいはい。うん、今行くね。
フハハハハハハハハハハハハハハ! 誰でもいい! 俺を……この俺を助けてみろ!
ぱっぎょーん。
うわぁ。ごめんなさいいいいっ!
『サンダー毒針フライングエルボーッ!』
ぱぎょーんッ!!
ふう……危なかったわね。
お、おまえは……魔法少女。
ここは危ないわ。さがっていなさい。
助けてくれなどと、貴様に頼んだおぼえは……。
大丈夫よ。
心配いらないわ。誰かに頼まれたからといって、やっていることではないのだから。
みんなを守るって、自分で決めたことだから──でも、ありがとう。
ありがとう……だと……。
私に頼らない、強い心を持った人がいてくれて嬉しいわ。
ぱっぎょー。
相手になるわよ、デビルベアー!!
地球のリングに毒針エルボー!! 華麗に舞います、サンダー☆タケル!
今日の私は……オレンジパワーに満ちていてよ!
ぱぎょぎょぎょー!
またタケルお姉さまの大活躍を見れてしまったわ……。
きょ、今日は大変だったね……。
フン……人騒がせな女のせいで、とんだ迷惑だ。
サンダー毒々モンスター!
ぐはっ!
だ、大丈夫……?
ええい……毒々モンスターではない! サンダー毒針フライングエルボーだろうが!
ファンなら技の名前ぐらい、きちんとおぼえておけ! 間違えるな! 技の使い手に失礼だろ!
あ、はい。すみません。
(そんなのおぼえなくっても、別にいいのに……)
そういえば……あの魔法少女もタケルと名乗っていたな……。
(ギクっ……)
もし、タケルが女だったら……。
い、いや……なんでもない。忘れてくれ。忘れていい……。
サンダーシックスストリングサムラーイ!!
ゲゲボっ!
サンダー☆タケルの活躍により、今日も平和が守られた!
だが、魔界の獣は早くも素材が足りなくてどうしようって感じ。
それでも戦え、サンダー☆タケル!
もうあとは、ずっとデビルベアーでいいかなあ!
次回『女子力高すぎ! 変身解除不能! 敵は日常、サンダー☆タケル大ピンチ!』におぬしもサンダークラッシュじゃ!
やばい! とうとう予告がついた!