人の数だけ、事件がある────
ここは、凶悪な犯罪がはびこる街。
都会の闇にまぎれ、今日も罪なき人の血が流れる。
そんな事件を解決するのが、このオレ────学生探偵の役目なのさ。
学生探偵J ~ File.1994 「制服姿の依頼人」
街で襲われそうになっていた少女を助けたオレは────
その場から一目散に走り去り、どうにか事務所に逃げ込むことができた。
せまくるしいところで悪いな。
適当なところに座ってくれよ。 今、お茶を持ってくる。
・・・・・・。
彼女は無言だった。
かわいそうに────。
よほど怖い思いをしたに違いない。
待たせたな。 コーヒーでよかったか。
・・・はい。
多少は気分が落ち着いたか。
よかったら、さっきの連中のこと話してくれないか。
あの人たちは・・・。
彼女がぽつり、ぽつりと語りだす。
あの人たちは、学校で成績が下から2番目と、3から10番目ぐらいまでの人たちです。
えっと、つまり────。
成績の順位が下から数えて10番目ぐらいまでの連中、ってことかな?
そうです。
でも、最下位の人はあの中にはいません。
なるほど。 それでそんな、ややこしい説明になったわけだ。
聞いてもいいかな?
どうぞ・・・。
あの連中は、どうしてキミを襲おうとしてたんだ?
私が・・・。
成績が最下位の人に会おうとしてたからです。
キミがそいつ────成績が最下位のヤツに会うと、どうなるんだ?
その人は、必死で勉強すると思います。
なるほどな。 ・・・そういうことか!
最下位のヤツが勉強して、成績が上がれば連中の順位は下がる。
そういうことなんだろう?
はい・・・。
事件のあらましはわかったぜ。
だが、ひとつだけ腑に落ちないことがあるな。
連中はどうして、最下位のヤツを狙わないんだ?
Jさん・・・。
どうした?
これ、先生から預かってきたプリントです。
えっ・・・ちょっ!? こ、こんなにたくさん?
あと、お母さんから手紙も預かってきました。
か、母ちゃんから!?
Jヘ。 最近、学校にも行かずに探偵稼業に励んでいるようだけど────。
学校から、あなたの成績について連絡がありました。
待てよ! 勝手に読むなってば!
読めって言われたんです。 ごめんなさい。
Jさんの成績が上がらなかったら、お父さんもここに来るって言ってました。
マジかよ!?
本当です。
なんてこった・・・。
けどよ・・・オレは、やめるわけにはいかないんだ。
事件のせいで泣いている人がいるかぎり・・・。
じゃあ、Jさんの成績が最下位だって言いふらしますね。
なんでだよ!! そういうの、やめてくれよ!
・・・ごめんなさい。
あなたのご両親から、もう依頼料をもらっているんです。
マジかよ!?
本当です。
ここは、凶悪な犯罪がはびこる街。
都会の闇にまぎれ、今日も罪なき人の血が流れる。