……くらえっ、必殺!
サンダーローリングクレイドル!!
パギョラーッ!!
1……2………………3!!
ズドガガガガーン!!
開始から……7分35秒。デビルベアーから、あっさり3カウントを奪うとは……成長したな、タケル。
(やだもう……フィニッシュに寝技なんか使ったせいで、胸がこすれちゃって……なんか、ムズムズして……変な感じ……)
どうした、タケル。怪我でもしたのか?
う、ううん。大丈夫よ。
まずは元の姿に戻らなくっちゃね。
いや……それなんだがな。
だがな?
さっきから変身解除信号を送っているのだがな。
イヤハヤ、これがまったく元に戻らんのじゃ。ハッハッハ。
つまり……どういうこと?
いつまでかはわからんが、しばらくその姿のままでいるしかない、ということなのだ。
えええええええええーっ!
嘘でしょぉー!? 本当に予告どおりの展開きちゃったのー!
(タケルの女子力が、まさかこれほどまで高まっているとは……)
(このままでは、タケルは……)
ま、まあ……そんなに長くはかからないよね。
……………………。
タケル、これだけは言っておこう。
タケルお姉さまぁーっ!!
わわっ……。
今日は活躍終わりですか? 悪者もうやっつけっちゃった? これから家に帰るんですか? どこに住んでるんですか? 住所は! 下着の色は!
えっ、えっと……あの。
やめないか、バカ子。
ぼえっ。
いきなりぶつことないでしょー!
タケル様……いや、その子が困っていたから、問答無用でおまえを悪役に設定したら、つい手が出てしまってな。
ムッキー! 許せなーい!
そ、それでは……私はこれで失礼しますね……。
ああっ……待って、お姉さまぁー!
まずいな……このままではタケル様が危ない……。
なんとかしなくては……。
ふぅ……危なかったわね……。
まさか、あんなところに同級生が通りかかるなんて……予想外だったわ。
それにしても……。
これからどうしよう……。
ん……?
あれ……?
キミ、もしかして……。
えっと、どなたでしたっけ……?
このあいだ、暴れ豚から俺を助けてくれた魔法少女?
え、えっと……。
そ、その節はどうも……。
堅苦しい挨拶はいいよ。俺さ、キミにお礼が言いたくってさ。
あのときは、ありがとうな。
ど、どうも……。
あのときのあんた、格好よかったぜ。俺、ホレそうになっちゃったもん。
え、ええーっ!?
いやいや。別に本気でってわけじゃなくてさ……俺、好きな子いるし。
そいつってさ、キミとちょっと似てるんだよね。
そういえば、あいつもキミと同じ名前の弟がいたっけかな。タケル……だよね。キミの名前?
え、ええ……。
(この人……もしかして、お姉ちゃんの知り合い……なのかな?)
お姉さまぁーっ!!
な、なんだ?
いけない! ちょ、ちょっと……これで失礼します!
おう! またな!
うわぁ……まだ追いかけてきてる……。
ドンッ……。
す、すいませ……。
人にイキナリぶつかっておいて、すいませんだとぉーっ!
お、お姉ちゃん!?
誰が、てめえの姉ちゃんだぁーっ! 謝りゃあ人を自分の姉ちゃん扱いしていい、とでも思ってんのかよっ!!
ご、ごめんなさい……。
(お姉ちゃんが、こんな乱暴な人だったなんて……)
お姉さまぁーっ! タケルお姉さまぁーっ! どこですかーっ!?
いけない! 逃げなくっちゃ……。
ん? 追われてるのか、おまえ?
あ……そうです。追われてます。
しょうがねーな。よし、こっちにこい。いいから! 早く!
は、はい……。
いいか。この電柱の影に入ってだな……じっとしてりゃあ、大丈夫だ。
お姉さまぁーっ! おっ、ねっ、えっ、さっ、まっ……どこですかぁーっ!
ほら。行っちまっただろ。
出てこいよ。もう大丈夫だぜ。
ふぅ……危なかったぁ。
あれ……タケル?
あっ……元に戻ってる!
おかしいな……さっきまで、そこに女の子がいなかったか……?
さ、さあ……。
まあいいか。無事に逃げられたみたいだしな。
(よかった……お姉ちゃんって、口調は乱暴だけど……本当は、困っている人を助けるような、優しい人なんだよね……)
帰ろうぜ、タケル。
うん。帰ろっ。
今日の晩飯、何にするんだ?
えっと、今日はね……。
今日もまた、サンダー☆タケルが平和を守った!
みんなの意外な一面を見て、タケルもちょっぴり成長したかもしれない!
がんばれ、タケル! 夕餉の炊事も手を抜くな!
晩ご飯は、肉じゃがとふろふき大根が食べたいのじゃ。
結局、何もできなかった……。
すみません。どうかお許しください……タケル様。
次回──『恐怖の人食いポリバケツ』に、キミもサンダークラッシュだ!