『あなた誰なの? ~7~』

あれ……先生、 こんなところで何してるんですか?

ん……。

あー……ちょっと、ヤボ用かな。

ヤボ用ですか~。

そう!! ヤボ用だ!

はぁ……。

だからもう帰れ。な。

え、でも……。

今からこの教室は先生が占拠する!

まだ、あとちょっと 時間つぶさないといけなくって……。

チッ……。

帰ったらイイコトしてやるぞ。 ウフーン。

そそ、そんなことされたら…… なんていうか、よけいに 帰れなくなっちゃうような……。

お色気逆効果!?

って、うわ。やば、来ちゃった。

おい。 そこ入れ。隠れろ。 ロッカーの中だ!

ななな、なんですかなんですか~?

しゃべるな。静かにしてろ。

この一ヶ月、 クラスのみんなに聞いて回ったんだ。

みんなね、話がバラバラなんだ。

ある者は、最初のうち 『そこに誰もいなかった』 と答えていた。

また別の者は 『そこには誰かがいたはずだ』 と思い込んでいた。

そうして結局、先生の事件が起きた。

その結果、今では 教室にいるほぼ全員が 『そこには誰かがいたはずだ』 と思うようになってしまった。

それで、キミはどうなんだい?

私の答えは、 たぶんあなたの役には立たないわよ。

どうしてそう思う?

答える前に、こっちに来てくれる。 怖くなければ──だけど。

…………。

このラクガキ、見えるかしら。 ダメよ、ほら。

もっと顔を近づけて。

『あなた誰なの?』

もういいわよ。

顔を上げてみて。

ほら。どうかしら。 何か見えた?

見えないよ。

何も見えないっ……!

だったら、それでいいじゃない。

あなたにとっては、 そのほうがいいのでしょう?

私は──見えるの。

そこに誰がいるか、見えているの。

だから、 あなたの求める答えにはならないわ。

だって、あなたたちは 『そこには誰かがいたはずだ』 と疑っているのでしょう。

でも、あなたは── 『そこには誰もいない』 と信じたいのだから。

い、いなかったはずなんだ……。

ここには、誰も……。

それが確かめたくて、 みんなの答えを聞いていたのね。

誰もいなかったはずなんだ!

でも。今──。

そこで僕らを見ている。

ボクたちのことですかね?

違うと思うよ。うん。

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公開日 2012/06/19 21:19 再生回数 15

作者からのコメント

あいつにはかかわるな。 あいつは、みんなに見えていないものが見えているんだ。 それは教室にいるやつとは違うんだ。 でも、本当にあなたのことが見えているのは、私なのだろうか。それとも、あいつ──? (全8回)

みんなのコメント

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