あれ……先生、 こんなところで何してるんですか?
ん……。
あー……ちょっと、ヤボ用かな。
ヤボ用ですか~。
そう!! ヤボ用だ!
はぁ……。
だからもう帰れ。な。
え、でも……。
今からこの教室は先生が占拠する!
まだ、あとちょっと 時間つぶさないといけなくって……。
チッ……。
帰ったらイイコトしてやるぞ。 ウフーン。
そそ、そんなことされたら…… なんていうか、よけいに 帰れなくなっちゃうような……。
お色気逆効果!?
って、うわ。やば、来ちゃった。
おい。 そこ入れ。隠れろ。 ロッカーの中だ!
ななな、なんですかなんですか~?
しゃべるな。静かにしてろ。
この一ヶ月、 クラスのみんなに聞いて回ったんだ。
みんなね、話がバラバラなんだ。
ある者は、最初のうち 『そこに誰もいなかった』 と答えていた。
また別の者は 『そこには誰かがいたはずだ』 と思い込んでいた。
そうして結局、先生の事件が起きた。
その結果、今では 教室にいるほぼ全員が 『そこには誰かがいたはずだ』 と思うようになってしまった。
それで、キミはどうなんだい?
私の答えは、 たぶんあなたの役には立たないわよ。
どうしてそう思う?
答える前に、こっちに来てくれる。 怖くなければ──だけど。
…………。
このラクガキ、見えるかしら。 ダメよ、ほら。
もっと顔を近づけて。
『あなた誰なの?』
もういいわよ。
顔を上げてみて。
ほら。どうかしら。 何か見えた?
見えないよ。
何も見えないっ……!
だったら、それでいいじゃない。
あなたにとっては、 そのほうがいいのでしょう?
私は──見えるの。
そこに誰がいるか、見えているの。
だから、 あなたの求める答えにはならないわ。
だって、あなたたちは 『そこには誰かがいたはずだ』 と疑っているのでしょう。
でも、あなたは── 『そこには誰もいない』 と信じたいのだから。
い、いなかったはずなんだ……。
ここには、誰も……。
それが確かめたくて、 みんなの答えを聞いていたのね。
誰もいなかったはずなんだ!
でも。今──。
そこで僕らを見ている。
ボクたちのことですかね?
違うと思うよ。うん。