私・・・あの、えっと・・・。
みんな知っていると思うけど、自己紹介しておきますね。
私、富士山です。
標高3776mの山なんだけど・・・。
普通の人間の男の子に、恋をしてしまいました。
うおー、ヤバいぜヤバいぜ!!
GWに友達と、富士の裾野までやってきたオレなのだが!
樹海に迷い込んで大ピンチ!
いや・・・笑ってる場合じゃなくってな・・・。
オレ・・・このまま・・・。
ここで死んじゃうのかな・・・?
こ、こんにちは・・・。
あ、どうも。 こんにちは。
って、救助の人ですか!?
い、いえ・・・私は富士・・・。
フジ?
ふっ、富士・・・山子っていいます。
ふじ・・・やまこさん?
キミも遭難しちゃったの?
えっと、わ・・・私、地元に住んでいるので・・・。
ちょっとお散歩中です。
こんなところが散歩道なのか。
スゲーな地元民。
よかったら、案内しましょうか。
そりゃ助かるなあ。
っていうか、助けて!! オレ、道に迷ってるんだ!
は、はいっ・・・。
それじゃあ、私についてきてくださいね。
ずっとそばにいるよ! もう離れない!
は、はい・・・嬉しいです。
そうして、私は────。
人間の姿になって、道に迷っていた彼を助けてあげたの。
彼は人間の世界に戻って────。
私は、また元の姿に戻って────。
でも────。
どれだけ相手を好きになっても、私たちは結ばれない運命なんです。
おじさん、ありがとう!
これで下山できるよ。
礼はいいから、はやく戻りなさい。
日が暮れるまでに帰らないと、まっくらになるからな。
はーい。
ふぅ・・・やれやれ。
あれから、もう15年か・・・。
富士山の近くに住んでみたけれど・・・山子さんとは、会えないまま・・・。
山子さぁ~ん!!
会いたい!! もう一度でいいから、会いたいよ~!
大丈夫だよ。
あなたの声は届いているから。
私、ずっと────。
あなたのそばにいるからね。