今日は「ホームラン」の概念について学習します。
はい、ネポラ。
ペルレは、「ホームラン」について学習します。
よろしい。
ではまず、ホームランについて学ぶ前に「野球」という概念に関する説明を受けてもらいます。
説明を受けます、ネポラ。
ペルレは学生である。
古代文明の研究を行っているネポラから授業を受けること。
ネポラはこの分野では最高にして、ただ一人の研究者であった。
ネポラの研究に疑念をさしはさめる者は誰もない。
それゆえ、ペルレのやることと言えば、師であるネポラの言葉に黙ってただうなずくことだけだ。
それがペルレの役目であった。
・・・以上です。 何か質問はありますか。
はい、ネポラ。
授業の内容とは、別の質問があります。
質問を受けます、ペルレ。
ありがとうございます、ネポラ。
ペルレからの質問。
私は現在位置から3800ポロセク離れた場所で、奇妙な文献を発見いたしました。
奇妙な文献についての説明を求めます、ペルレ。
説明いたします、ネポラ。
その文献は、たいへん脆いものでした。
文献は炭素系繊維質で構成されていたため、燃焼に弱く、高密度エネルギー体である私には触れることさえできないものだったのです。
私はマーカーの設置、ならびに光学観測を行い、文献の表面に記載された古代文字を記録いたしました。
記録情報の放射パターンを確認。
解析をしていただけますか、ネポラ。
可能です、ペルレ。
私の重力圧縮式光力場回路にあるデータベースから、類似の情報を検索。
解析結果を閲覧してもよろしいでしょうか、ネポラ。
許可します、ペルレ。
『お父さんへ 今日は父の日です。 いつもありがとう。 マリコより』
質問があります、ネポラ。
個体名マリコが示している「父の日」とは、どのような概念でしょうか。
古代文明の生命体が、炭素基体の生物であったことは知っていますね、ペルレ。
彼らはエネルギーで構成された私たちとは異なり、世代間のつながりが密接だったようです。
父、という世代的上位存在が、下位の存在を保護、そして教育していく制度でありますね。
そのとおりです、ペルレ。
その育成の努力に対する感謝を示す時間帯が、一定周期ごとに訪れる「父の日」という概念なのです。
理解しました、ネポラ。
質問は以上です。
そして、これは・・・。
文献の近くで発見した、高反発力磁場重積体です。
・・・・・・!?
あなたから受けた授業に対する感謝として、これを提供いたします。
受け入れてくれますか、ネポラ?
それはたいへんすばらしいものです。私はとても嬉しいです、ペルレ。
この感情をなんと示すべきなのか、類似の概念を検索。
これは「父の日」に父親が抱く感情と類似しているのではないか、と推測。
これは新たな発見です。私は、とても大きな喜びに包まれている。あなたに理解できますか、ペルレ。
師の新たな発見に対して、ペルレは静かにうなずいた。