うーん……やっぱり載ってないか。
どうしました、先生。
ご自分も先生じゃないですか。 そんな言い方しないでください。
へへへ。 私は出来の悪い先生ですから。
……その服装、 いい加減に変えないんですか。
『落ち着いた服装にしなさい』って 教頭先生に言われてませんでした?
毎日言われてると、慣れちゃうよね。
毎日見てても慣れませんけどね。
うまいこと言うねえ。
とにかく、ちゃんとしてくださいね。
そりゃもう。 ちゃんとしますよ。ちゃんと。
生徒との関係も、ほどほどに── ちゃーんとね。
……お願いします。
先生、あの……。
あら。どうしたの。
先生にお願いがあって……。
あの机なんですけど…… 放課後のみんながいないうちに、 片づけておいてもらえませんか。
どういうこと?
あの机……あれがあると、 みんな不安で……。
不安って、どういうことなの。
なんか、あの……。
あそこに誰かいるんじゃないか、 って……みんな言ってますよ。
誰かいる……? 誰も使ってない席で?
だから……誰かいるみたいで、 気持ち悪いってことです。
そう……仕方ないわね。
今日の放課後、 先生が片づけておきます。
ホームルームが終わったら、 全員すぐに帰るように……って。
委員長から全員に伝えておくように、 頼んでおいてね。
わかりました。 伝えておきます。
やっぱり名簿にも載ってないか……。
何回数えてみても、40人。
けれど、教室にある机と椅子は ……41。
どういうことなのかしら……ね。
なぜ私にわからないのだろう。 担任教師であるはずの私が。
41番目の机、か……。
40人だけでも──いいえ。 1人だけでも、こっちは 首が回らなくなりそうなのにね。
あの子とのこと、どうしようかしら。
『これで最後にしましょう』 と言っておいたけど…… 納得してなかったみたいだし。
もし、誰かに知られたら…… 私の人生もおしまいだわ。
とにかく、ちゃんとしないと……。
とりあえず、 これは片づけておかないとね。
『あなた誰なの?』
なにこれ……?
誰よ、こんなところに ラクガキなんかしたのは。
まったく…… 誰なの、はこっちが言いたいわよね。
ガッ──!
え……。
あ、あなた……だ……の……。
ゴッ……ドカッ──ゴキッ!!
頭の骨に何か硬いものがぶつかる。
その音が何度か響いて──。
二度と目が覚めることはなかった。