わしはな、とってもえらい、みすてりあすぷりちーがーる、おコンさまじゃ!
わしは今、とーっても腹が空いておるんじゃ。小僧、なにか喰うもんもってこい。
くそう! わけのわからん奴め! あとでぼくの電波でめちゃくちゃにしてやるからなぁっ!
どたどたどた……
と、とりあえず、冷蔵庫にある食べ物全部持ってきてやったぞ。
おお! こりゃありがたい! さっそくいただくとしよう。
おおっ! これはいなり寿司ではないか! わしはこれが大好きなんじゃ!
はぐはぐっ!
うまいのう! 人間の食い物のなかでこれが一番美味じゃ!
お! ちくわではないか! これもうまいんじゃ!
おお! こっちはさつまあげ! これもいいいんじゃあ!
ちょ、全部食べる気かよ!
はぐはぐっ!
聞いてないし。
ばくばく、もぐもぐ。
ちょ、ちょっと、ほんとに全部食べちゃったよこいつ。
ゲップ!
なんて下品なんだ。
よし、腹もいっぱいになったし、おぬしの悩みとやらを聞いてやろう。
ぼくの悩み?
それは、この世界をぼくの電波で思いのままにして、ぼくに歯向かう奴全てを粛清してやることなんけど、
どうしても思い通りにならないんだよう。
おぬしがさっきから言っとるその”電波”とはなんぞや?
よくぞ聞いてくれました!
”電波”ってのはネ、ぼくの思念波のことんだ!
……。
ぼくの”電波”をネ、地上デジタル波のデータ領域に乗せて、テレビ局のアンテナを経由して、世界中に発信するんだ!
そして、テレビとかから、ぼくの電波を発信、それを受信した世界中の愚民がぼくにひれ伏すのさ!
「皇帝陛下ばんざい」と!!
……。
歯向かう奴は、全員粛清だ!!
中二病なんて、もう古いよ! これからは”電波”の時代だよ! 電波は大切にネ!
さっぱりわからん。
なるほど。おぬしは「頭がとてもざんねんな子」ということじゃな。
なんだと! これでも勉強できるんだぞぼくは!!
なのに! あいつらが! あいつらがぼくを……。ちくしょうっ!
うん? あいつらとは?
ぼくをいじめるやつらだよ!!
詳しく話してみい。
いつもいつも、ぼくに暴力ふるってくるんだよ!! だから電波で……
電波はとりあえず、脇へ置いておけ。
置いちゃうの? 電波は大切なのに。
ぼくはね、先月、父さんの仕事の関係で東京から、このクソ田舎に越してきたばかりなんだけど。
貴様、クソ田舎とはなんじゃ! 地元民をバカにするでないぞ!
そんな都会的で、スタイリッシュで、洗練されたこのぼくに因縁つけてくる奴がいるんだよう。
いちいちむかつく言い方する奴じゃな、おぬしは。
それで、体育館裏とか、公園の茂みの中とかで、いつも蹴られているんだよう。
あいつら、「顔を殴るとアザとかできて、ばれるとマズイから、やるならボディにしとけ」って言って、腹とか背中狙ってくるんだよう。
最近の子供は、やる事がエグイのう。
だから、この電波でやつらを……。
電波は脇へ置いておけ。
置いちゃうの?
つまり、おぬしの悩みというのは、いじめっ子に仕返ししたいということじゃろ?
そうだよう。それができないから困ってるんだよう。
いじめっ子から、いじめられなくなればいいってことじゃろう?
そうだよう。
なるほど、わかった。
いじめっ子にやり返したいなんて、子供の悩みはいつの時代も変わらんのじゃのう。
よし! わしがひと肌脱いでやろう。
え? 脱ぐの? ぐへへ、ぐへへ。
いい加減にせい!!
ぐはっ!
学習せん奴じゃな、まったく。
では、いい解決策を考えるとするかのう。
とっとと考えろ! このケモノアマ!!
貴様、このわしに向かって……
す、すいませんでした! 反省してます。どうぞお力をお貸しください。
わかればいいんじゃ、わかれば、な。
つづく