部長、今年もバレンタインがやってきましたね!
そうだな。
オレたちバレンタイン部員としては、一番楽しい時期だよな。
今年は、本命チョコでも渡しちゃおっかな~。
ほしいな~。 本命チョコほしいな~。
ガラッ────。
邪魔するぜ。
なっ・・・なんだ、テメェは!?
この中で、一番バレンタインの強いやつはどいつだ・・・?
一番強いやつ・・・だと?
そうだ。 雑魚に用はない。
先輩、コイツ・・・! 噂の部活荒らしですっ。
チョコを奪って去っていく、噂の男!
いい度胸だなっ! だが、ここバレンタイン部は他の部のようにはいかないぜ!
人聞きの悪いことを言わないでほしいな。
チョコは奪わず、もらうものさ。
誰があんたなんかに!
あの・・・これ。
受け取ってください!
ありがとうよ。 もらっておくぜ!!
エヘヘ・・・なんか、照れちゃうね。
照れちゃうね、じゃねーよ!
いきなりチョコ渡しちゃってどうすんだよ!
す、すみません・・・。
だって、なんか・・・あいつの目ヂカラがスゴくって・・・。
目ヂカラ・・・だと?
────ギラーン!!
次は私が相手だ!
目を閉じているのね!?
これなら目ヂカラは効かないぜ!!
あっ・・・あの構えは!?
なん、だ・・・と!?
ヤツの背中の筋肉が、バレンタインのハートの形にッ!?
これ・・・もらってください。
もちろんだ!! もらっておくぜ!
バカなっ・・・!! バレンタイン部員から、チョコをふたつも奪っただと!?
奪ってはいないさ! ・・・もらったのさ。
部長、任せてくださいっ。 今度は・・・ボクが相手だ!
ほう・・・男の身でオレに戦いを挑むとは、命知らずだな。
こう見えても、ボクはちょっと前に流行った男の娘なんだ!
だから、ボクからチョコをもらってもうれしくないはずだ!
そんなことは、ない。
チョコもほしいが・・・おまえのことが、もっとほしいぜ・・・。
えっ・・・!?
い、いいの? 本当に? 男・・・なんだよ。
関係ねえって言ってるだろ。
あっ・・・。
「ちょっ・・・部室でナニを!?」 「うわー、うわー! スゴい!」 「え、え!? そこまで・・・」
・・・フハァー。
一生、あなたについていきます。 このチョコが、その証です。
チョコはいただいたぜ。
じゃあな!! アバヨ!
ああっ。 待って・・・待ってください!
い、行っちゃった・・・。
あんなバレンタイン・・・はじめてだったね。
チクショウ・・・負けたぜ。
けどよ・・・不思議とくやしくねえな。
なんだか胸の奥が、スッキリした気分だぜ!