ユッキー!!おはようー!!
のわ!? ……利香!!挨拶する度に殴るんじゃねぇ!!
なーに小さい事言ってんの!! 男だろ!!気にしない気にしない!!
男だけど痛いものは痛いんだよ!! やるならせめて強さを落としてくれ!!
うーん、何だかんだ言いながら殴ってもいいと言うユッキー……もしかしてツンデレ?
馬鹿!!何言ってんだ!!
照れない照れない!! これもユッキーの個性だと思うよ!! これからどんどん押し出していこう!!
ちくしょおおおぉぉぉ!! 俺の個性はそんな変な物になっているのかああああぁぁ!!!
変な物って何よー!! ツンデレは最高なんだからね!! 分かってない!分かってないよユッキーは!!
いや分からんわ!!そもそも興味無いし!!
……まーたやってるよあの二人。
リア充め……爆発すればいいのに……。
あー疲れた……、今日も利香に振り回されっぱなしだったな……。
……そういえば地味に利香とは違うクラスなんだよな……、あいつは普段もあんなにハイテンションなのか?
あら、幸彰じゃない。
お、志乃じゃないか。 珍しいな一人で居るなんて。
どういう意味よそれ、私だって一人で居る時もあるわよ。
いや、いつも利香と一緒に居るからさ……何か新鮮だな。
……貴方の脳内はどうなっているのかしら?
何かおかしい事言ったか俺!?
それは置いといて……貴方、利香に何かしたの?
いや、何もしてねーよ。
そう……何か今日一日ずっと辛そうな表情をしてたから、幸彰が何かしたかと思ったわ。
は?辛そうな表情? そんな馬鹿な、朝はいつも通りだったぞ。
ふーん……そういえば昼ごはんの時はいつも通り元気だったわね。
あー……無理矢理「はい、あーん」をされた時か。 あの暴走っぷりはいつもの事だけどな。
その後からだったのよね……クラスに戻って、幸彰と離れてから辛そうにしてて……。
からかう相手が居なくて暇だったからじゃねーの? ……いや志乃が居るからそんな事は無いか……。
貴方……教育が必要ね。
ごめんなさい冗談です、そのバールの様な物はしまってください。
……まあ私達が考えても答えは出ないわね、利香に直接聞いてみないと。
大丈夫だって、どーせ明日になってたら元に戻ってるよ。
それだったらいいけど。
凄い表情だなおい。
ただいまー。
……うーん、何か気になるんだよな。 利香の様子がおかしい……何故か気になる……。
……ってあれ?靴が多いぞ。 誰か来ているのか?
あらユッキー!!おかえりなさーい!!
わあああああぁぁ!!! 母さん!!何やってるんだよ!!
いやー昔懐かしい制服が見つかってね、試しに来てみたんだけどこれが何とピッタリ!! 私もまだまだ若いという事ね!!
それ成長してないだけだろ。
辛辣ー。 ユッキーはそんな酷い事を言わない子だったのに……お母さんショック……。
……俺部屋に戻っていい?
え?ああ、うん。 それと利香ちゃん来てるわよ。
な、何ですと!?
何か無理矢理元気そうに振舞ってる感じだったけど……ユッキー何かした?
うわ……何かデジャヴだ。
やっぱり利香ちゃんに意地悪したんでしょ!! そんな子に育てた覚えはありません!!
何もしとらんわ!! とにかく部屋に居るんだよな!?
ええ!!それはもうユッキーが隠しているあの本の場所も教えて……。
ぎゃああああああぁぁぁ!!! 何を教えてんだ貴様ああああああぁぁぁ!!!
大丈夫大丈夫、ユッキーも男の子だしね!! 利香ちゃんも分かってくれるはずよ!!
……いや、まずそんな本持ってないからな?違う本だからな?勘違いするなよ?
とりあえず利香に会ってくるか……行き辛いな。
ユッキー。
ん?
……利香ちゃんね、本当に泣きそうな顔をしてたよ。 何というか……寂しそうだった感じかな。
左様ですか。
頑張りなよユッキー、利香ちゃんはきっとユッキーに会いたがってるはずだから。
はいはい、どーせからかう相手を欲しがってるだけだろ? 会ってやるとしますか。
……違うと思うけどなぁ……。
入るぞー。
……あ……ユッキー……。
な……利香? 何で泣いてるんだ?
……ユッキー……。 えーとね……その……。
珍しく歯切れが悪いな。 どうした?言ってみな。
いやね……別に用があるわけじゃないんだけど……。
はぁ? 何言ってんだお前、それじゃ俺の部屋に居る意味もないだろ。
……ごめん……。
いやいやいや!! そこで謝るとこじゃないだろ?
……ごめん……なさい……。
あー……何だ、その……謝らなくていいって。
利香が好きな時に俺を呼んでくれても構わないぞ?というか俺達ではそんなの気にする事でも無いと思うけどな。
……うん……。
(……や、やり辛い……)
……あー、何だ……その……もしかして俺をからかいに来たのか?
……違うよぉ……。
お?お、おぉ……。 じゃ、じゃあ……その逆で……もしかして甘えに来たとか?
っ!!!
(まさかの大当たり!?)
だ、だって……ユッキーと一緒に居たいんだもん……ユッキーと一時も離れたくないもん……。
お、お前な……朝とか昼とかいつも会ってるだろ? 授業中とかどうしてるんだ?
皆に気付かれない様に泣いているよ……。
(おいおいマジか!!……だから志乃の奴、利香が辛そうな表情をしていると言っていたのか……)
泣いてるってお前な……。
だ、だって離れたくないんだもん!!ずっと側に居て欲しいんだもん!!
お、おう。それは分かった。 でも今は一緒に居るじゃないか? 学校では朝と昼と下校の時ぐらいしか一緒に居られないけど……。
……足りないよぉ……もっとユッキーと一緒に居たい……。
いや俺だけというのもおかしいだろ、志乃とは仲が良いんだよな? 俺だけじゃなく志乃も居るんだから寂しくない……。
違うもん!!志乃ちゃんとユッキーは違うもん!! だって私……ユッキーの事が好きだから!!
(なっ!?こ、このタイミングで言うのか!?しかも泣きながら告白!?)
(いや確かに俺もこいつの事は好きだ、毎朝酷い目に遭うけど可愛いし、何だかんだ言って俺に合わせてくれるし……)
ユッキーが好きなんだもん……好きな人に甘えたいよ……。
……お、お前な……。
ユッキーは……嫌? こんな可愛げない女なんて嫌?すぐにからかってくる女なんて嫌?
「いや」……それは……。
……や、やっぱり……私なんか……嫌い……だよね……。 ごめんね……私なんかが……ユッキーを好きになって……。
え!?いやおい……。
ごめんなさい……今まで酷い事してきてごめんなさい……。 もう……酷い事なんてしないから……せめて……とも、だち……に
馬鹿野郎!!
ユッ……キー……?
そんな寂しい事言うんじゃねぇ!! そもそも俺の答えをちゃんと聞かないで何決めつけてるんだ!!ふざけんな!!
……お前がそんなにまで追い詰められているなんて知らなかった……、いいか?言うぞ?
あ……。
……俺も好きだ、利香。
っ!! ユッキー……ユッキー……!!
ほら、飛び込んで来い。 好きな人に甘えたいんだろう? 俺は「好きな人に甘えられたい」んだ。
あ、あぁ……!!
(その後、利香は俺にしがみついて大泣きした。俺にしがみつくその手は絶対に離さないという意思が強く表れていた)
(結構痛かったのは内緒だ)
(ま、まあこんな事もあって緊張が解けたのか安心したのか利香はそのまま眠ってしまった)
(絶対に離すまいと言うかの如く腕を巻き付けてくる……これは外せないな)
(ま、まぁこれで晴れて俺と利香は恋人同士になれたという事だ!!うん!!よかったよかった!!)
しかしこの時、俺は気づいていなかった。
部屋のドアの隙間からピンクの悪魔が覗いていた事を。
「俺は好きな人に甘えられたいんだ」
(……ぎゃあああああああぁぁぁぁ!!!)
(な、何て臭いセリフ……!!まさかユッキーがこんな事言うなんて……!!)
(ちくしょおおおおぉぉぉ!! せっかく丸く収まったというのにこうなるのかああああぁぁぁ!!!)
二人のやり取りは他所に、利香は幸せそうな寝顔をしていた。 好きな人が側に居るから……。