息子達よ!! 今日は七夕だ!!皆の者、短冊を書くぞ!!
唐突だなおい!! いつもの事だけど!!
短冊と飾る笹は用意してあります。 夜には飾るので皆様ご記入をお願いいたします。
七夕かー、紗希ちゃんはどんな願い事をするのー? 私はもちろん紗希ちゃんとずっと一緒に居られます様にって書くよ!!
……秘密……だよ。
むー?もったいぶらないで教えてよー。
(……ん?何だか紗希の様子がおかしいな……)
息子よ!お前はもう書いたか!? そうかまだ書いてないんだな!!素直に「お父様と一緒に過ごせますように」と書くんだ!!今すぐにだ!!
急に何だ親父は!! つーかそんな願い事なんて書かねぇし!!
うおおおおおおおおおぉぉん!! 父さんは悲しい!!父さんは悲しいぞ!! 親が子と一緒に居たいと願って何が悪い!!
誰も親父と離れたいって言ってねーよ!! つーか親父はどんな事を書いたんだ!?
そんな事決まっているだろう!! 俺は「メイド長とあまーい日々を永遠に過ごせますように」と書いた!!
うわー……予想通りだ。
あらあら……御主人様ったらもう……。
俺はいつでもメイド長の事を想っている!!惚れ直しただろう!?お前の願い事も「とても素敵でダンディーな御主人様とずっと一緒に暮らせますように」って書いただろう!?
……。
……。
違います。
メイド長おおおおおおぉぉぉ!!!
結局こうなるのかよ!!
短冊の飾りつけ終了しましたよ。
……何だこの大きさは、よくこんな大きい笹を用意できたな。
やるからには何事もインパクトが大事だ!!凄いだろう!?
皆が書いた短冊が見れるよー、これは旦那様かな?
……あれ? そういえば紗希が居ないな……どこに行ったんだ?
……七夕……彦星と織姫が一年に一回だけ会える大切な日……。
……雨が降ると……会えなくなり二人は深い悲しみに包まれ涙する……。 ……とても悲しいお話……。
紗希!! こんな所に居たのか!!
ご、御主人様……。
どうしたんだ紗希、一日中暗い顔をして……。
……御主人様、七夕の日に雨が降ったらどうなるか知っていますか?
雨?……あー、織姫と彦星を分ける川が氾濫して会えなくなり、二人は涙を流す。 その涙が七夕に降る雨……って言われてるんだよな。
そうなのです……一年に一回しか会えないのに雨が降ったら会えない……そんなの悲しすぎます……。
もしこれが私と御主人様だったら……何て思うと……私……私……!!
紗希。
……あ……御主人……様……。
今日は雨が降っていない、だからお前が心配する事なんてないんだ。
……はい……。
紗希、俺は短冊にこんな願い事を書いたんだ。 「親父、メイド長、歩夢……そして紗希とずっと一緒に居られます様に」ってな。
……っ!!
例え雨が降ろうと俺は必ず紗希の傍に居る、これは誰かに強制されてるからじゃない。 俺の願いでもあるんだからな。
……御主人……様……!!
……お前の願いは何だ?
……わ、私の願いは……。
旦那様、メイド長、歩夢ちゃん……そして御主人様とずっと一緒に居られますように。 ……大好きな御主人様とずっとずっと一緒に……居られますように……。
……綺麗な星空だ、これなら織姫と彦星もきっと会えたと思う。 そうは思わないか?紗希。
……はい……御主人様……。 私もそう思います……今こうして御主人様と星空を見ているのだから……。
雄大に立つ笹、揺れる短冊。 そこにはたくさんの人の願いがつまっている星の船。
天の川を渡り、その願いはきっと織姫と彦星にも届くだろう。 ……願いがある限り、この物語は終わらないのだから。