それは久しぶりに雨が降っていた夜の事だった。
~添い寝だよ!紗希ちゃん!!~
うお!!
ぬわーーーっ!! 雷だああああぁぁぁ!! へそが取られるううううぅぅぅ!!
何を言ってるんだ親父! 取られる訳ないだろ!!
今日ずっと雨が降っておりましたが……遂に雷まで落ちて来ましたね。
こりゃ凄いわ。 今日は早めに寝たほうがいいな。
あら……もう寝てしまいますの?
……何頬を赤らめてるんだおい。 何をしようとしている。
それはもちろん……。
お坊ちゃまに夜伽を……。
わー!!それ以上言うな!! それ以上言ってはいけない!!
ぬおおおおおぉぉぉ!! 羨ましい!!羨ましいぞ息子よ!!
羨ましがるな!! そんな事されて堪るか!!
……むぅ。
はぁ……。
いや待て!!何この俺が悪いみたいな空気!!
今のは完全無欠にお前が悪い……!
いや完全無欠って何だよ!! つーか本気モード!?
貴様……女子が恥を偲んで夜伽をすると言ったのに「そんな事」呼ばわりとはどういう事だ……!
怒りのベクトルが斜め上じゃねーか!! つーか嫉妬してんのか親父!!
うおおおおおおおおおおぉぉぉぉんんんん!!!!!
図星だったのかよ!! だから羨ましがるんじゃねぇって!!
うお!?停電!?
ぬわーーっ!!世界の終わりだあああぁぁぁ!! 死ぬ時はメイド長の膝の上で死ぬううううぅぅぅ!!
分かりやすいなオイ!! ってかただの停電だから!!
ひゃん!!
その声は……メイド長!?
もう……お坊ちゃま……大胆なんだから……。
いや待て待て待て!! 俺何もしてないぞ!!
停電だからって……私に乱暴する気ですか……エ
やかましいわ!! それ以上喋るな!!
息子おおおおおおぉぉぉぉぉ!! 貴様あああああぁぁぁ!!
うるせえええええぇぇ!!!
御主人様あああぁぁぁぁ!!!!
今度は何だあああああぁぁ!!!?
な……だ、誰だ!? 俺に抱きついて来てるのは!!
……ふぅ、どうやら復旧したみたいだ……。
さ、紗希!?紗希だったのか? どうしたんだそんなに強く握り締めて……。
御主人様……っ!!
(……寒い……とかじゃないよな)
(あんなに震えちゃって……可愛い……)
紗希……お前もしかして雷苦手なのか?
かみなり……こわい……。
(遂にひらがなになった!!)
まあなんだ……落ち着くまでこうしていてやるから……元気出せ。
あ……。
(こういう時は膝に乗せて頭を撫でる、これをすれば紗希は元気になる)
(早速効果が出て来たな、見る見る内に表情が明るく……)
ご……ごしゅじんさまああぁぁぁ……!!
(雷空気読めええええぇぇぇ!!!)
最初の予定通り今日は早めに寝る事にした。 明日になれば雨も止むだろう……。
ただ、どうしても紗希が俺から離れないので……。
ごめんなさい……ごめんなさい……っ!!
謝るなよ紗希、何も心配せずに好きなだけ俺を抱き締めてていいからな。
御主人様ぁ……っ!
(涙目で身体を震わせている……何だこいつは兵器か何かか?)
よし、んじゃ寝るとするか。 電気消すぞ?
は、はい……。
……紗希?
は、はい……何でしょう?
どうした、そんなに離れて。 もっとこっちに来いよ。
い、いえそんな!!
さっき言ったはずだぜ? 好きなだけ抱きついてていいってな。
だ、大丈夫です……私は
ひにゃあああああぁぁぁ!!!
(猫か……!!)
ご、御主人様ぁ……。
無理をするからそうなる。 ほら、来いよ。
……。
……。
…………。
(もうちょっと強く抱き締めてやるか)
……。
御主人……様……。
(電気消してるから紗希の顔は見えないが……多分嬉しそうな顔をしているだろうな)
(その証拠に紗希の身体の震えも止まってきてるしな)
あ……。
(お、おう……胸に顔を埋めてきたか)
……ごしゅじんしゃま……。
(赤ちゃん言葉……いや呂律が回ってないだけか?……という事はもう寝るなこいつ)
……すき……です……。
!!!!!
(……今、確かに俺の事を『好き』って言ったよな……)
(どっちの意味だ?主人として好きなのか、それとも……異性として……)
(……いや疲れてるだけか、今日は雷のせいにしておこう……)
……当たり前の事言いやがって紗希……。
……大好きに決まってるだろ。
(……は!俺は今一体何を!?)
(……今日は駄目だな、俺も寝よう)
~続く~