…………。
夢を見ていた…。
そこには得体の知れない化け物と…
一人の少女が対峙していた…。
少女の凛とした瞳は化け物を捕らえて離さない…。
そして、しびれを切らせた化け物が少女に飛びかかった。
が、
少女は立っていた。
代わりに化け物が少女の足元に倒れていた。
やがて倒れた化け物は煙のように消えてゆき、後には輝く球のようなものが数個残っていた…。
それを拾い上げた少女は此方を向いた…。
???「………………。」
何かを喋っているようだが…その声は聞こえなかった。
(…起…。)
(…起き…さ…。)
???「…………星座……宙へ……。」
最後に聞こえた言葉はこれだけだった。
そして、俺の意識は夢から醒めていった…。
宮子「起きろ~。朝ですよ~。 月曜日ですよ~。学校ですよ~。」
昴「頼むから起こすならもうちょっと気持ちのいい目覚めが出来るように心掛けてくれないかな…。」
宮子「あぁ、起きた。おはよう。」
昴「おはよう…。」
宮子「よし、起きたら着替えて顔洗ってご飯食べて学校へ行こう!」
昴「…宮子って…ホントに月曜から元気だよな…。」
宮子「?だって、休みが明けてまた新しい何かが始まるんだよ?始まりっていいことだと思うんだけどね。」
昴「はぁ…。そうですか…。」
宮子「ほらほら、早く準備して準備。 学校に遅れちゃうよ?」
昴「あ~もう。分かったよ。 先に玄関で待ってて。」
宮子「分かった。あんまり待たせないでよ?」
昴「はいはい、なるべく早く仕度しますよ。」
宮子「じゃ、待ってるね。」
昴「はぁ…。鬱だ…。」
昴「それにしても…さっきの夢…妙にリアルだったというか…なんというか…。」
昴「星座がどうたらこうたらって言ってたけど…。」
昴「まぁ、所詮夢だしな。深く考えるのは止めておこう。」
昴「おっと、そんなこと考えてる場合じゃないや。いそがなきゃな。」
数十分後…
銀陽高等学校 校門前
宮子「へぇ、じゃあおじさんとおばさんまだ当分帰って来ないんだ。」
昴「なんか仕事が忙しいらしいよ。よく分からないけど。」
宮子「いきなり鍵渡されて、昴の事お願いね。なんて言われた時は焦ったけどさ。」
宮子「ま、忙しいならしょうがないわよね。」
昴「おかげで俺は毎朝憂鬱だけどね…。」
宮子「何か言った?」
昴「別に。」
宮子「まぁ、いいわ。それより早く教室行きましょ?」
昴「そうだな。」
昴「ん?」
昴(あの子…。夢に出てきた子にそっくりだ…。)
昴「なぁ、宮子。あの子って…。」
宮子「ん?あぁ、響子ちゃんの事?」
昴「へぇ…知らないや。」
宮子「獅子堂響子ちゃん。確か昴は同じクラスになった事無かったわよね。」
宮子「じゃあ、知らないのも無理ないわね。」
昴「まぁ…そうだな。」
宮子「って、まったりトークしてる場合じゃないよ!?急がなきゃ!!」
昴「おっと、やばいやばい!急ごう!」
そして…
放課後…
第二校舎屋上
昴「あぁ~…授業終わった…。」
昴「教室なんて閉鎖的な所に居たら息が詰まるよ。」
………。
昴「ん?」
女生徒A「でね、その助かった方が言うには大きいトカゲみたいな怪物に襲われたんだって!」
女生徒B「なにそれ!?」
昴「…………。」
昴「…………蜥蜴。」
宮子「でも…なんで見えなくなっちゃったんだろう…蜥蜴座。」
昴「………………関係無いよな?」
昴「…………ん?」
昴「いつの間にか俺一人になってるな…」
昴「…俺も帰るか。」
昴「ん?」
昴「蜥蜴?」
昴「なんで学校の屋上に蜥蜴なんか…。」
ざわざわざわざわ…
昴「!?」
昴「なんだよこれ…!?なんで空が急に…!?」
グルルルルルルルルル…
昴「!?何の音だ…?」
昴「バイク…?いや…これは…」
昴「唸り声!」
昴「ッ!?うわっ!!」
グルルルルルルルルル…
昴「ッ!!??怪…物…!?」
昴「嘘…だろ…!?」
グルルルルルルルルル…
昴「こいつ…よく見れば蜥蜴みたいな…。」
昴「ってことは!さっき噂されていた怪物ってコイツの事か!?」
グルルルルルルルルル…!!
昴「マジ…かよ…!どうすりゃいいんだよ!?こんなやつ!!」
グルルルルルルルルル!!
グエエエエエエエエエ!!
昴「!!」
昴「(マジ…かよ…!?)」
昴「(俺…死ぬのか…?)」
昴「(こんなところで…)」
昴「(何も分からないまま…)」
昴「(そんな…)」
昴「そんなのアリかよ!!」
グエエエエエエエエエエエ!!
昴「死んでたまるか!!こんなところで!!」
昴「死んで…たまるかよッ!!!!」
グエエエエエエエ!!
ザシュッ!!
昴「!!」
一瞬だった。
俺が見てる前で、その化け物は…。
何かに斬られた。
グ…エエエエ…!
ドシャッ!!
やがてその化け物が崩れ落ちた。
そして、その後ろに居たのは…
あの、少女だった。
そしてその少女の横には、一頭の獅子が居た。
???「ありがとう、もう戻っていいわ。」
???「お疲れ様。」
そう言うと少女は獅子の頭に手を乗せた。
そして、その獅子はまるで霧のように霧散して消えていった。
???「大丈夫?怪我とかはしてない?」
昴「あ…うん。」
???「よかった…。」
昴「えと…助けてくれたんだよね? ありがとう。」
昴「それと…君は何者…?」
???「……………。」
少女はくるりと背を向け先ほどの化け物が倒れた場所まで歩きだした。
そして、化け物が居た場所には輝く球のようなものが数個転がっていた。
少女はそれを拾い上げると、此方に向き直しこう言った。
???「私は宙から落ちた星座を狩る者。」
???「そして…その星座を宙へ帰す者。」
続くと思う。