【店員】 お客様!! おめでとうございます!
【山田】 なんの話?
【店員】 まもなく、お客様からお預かりしていた山田が満期になります。
【山田】 そんなのどうでもいいから・・・。
【山田】 ちょうどお時間でございますね。
【山田】 え・・・?
【山田】 この世に・・・山田は、一人いれば充分ですから・・・。
【山田】 ちょ・・・あの、何の話・・・?
【山田】 今日から、本物の山田は・・・。
そこまで聞いて、怖くなって銀行から飛び出した。
【山田】 な、何が・・・。 何が起きてるんだ?
【山田】 山田が満期・・・? 利息がついた、ってことなのか?
【山田】 冗談じゃない! 誰かっ・・・。
道を歩く人に、助けを求めた。
【山田】 ん?
【山田】 どうしたの?
【山田】 ヒィィィィッ・・・!?
町は、山田だらけになっていた。
【山田】 キミ? もしかして、山田かい?
【山田】 呼んだ? オレも山田だけど。
【山田】 おっと・・・こんなところにいたか、山田・・・くん。
【山田】 く、くるなっ・・・!! やめろぉぉぉぉ・・・!
山田だらけの人並みをくぐり、必死に走り抜けていく────。
【山田】 ハァハァ・・・はぁ・・・。
【山田】 どうなっちまうんだ、これ・・・。
【山田】 イヤだ・・・誰か・・・。
【金子】 お、山田っ。
【山田】 ひっ・・・!?
【金子】 めずらしく一人なのか。 さてはフラレたな?
【山田】 か、金子・・・?
【山田】 なんだよー。 何ビクついてんだよ。
【山田】 かね、こ・・・。
【金子】 お金なら貸さないよー。
【山田】 助け、て・・・。
【金子】 え?
【山田】 おまえしか、いないんだ・・・。
【金子】 い、いきなり・・・何を・・・。
【金子】 私が山田なんかと・・・。
【山田】 お願いだ・・・そばにいてくれ。 オレには、もう・・・おまえしかいないんだ。
【金子】 え・・・本気、なの?
【金子】 それなら、い・・・いいよ。
それから、どのぐらい時間がすぎただろうか────。
気がつくと、町はすっかり元通りになっていた。
でも────。
【山田】 あれは、何だったんだろう・・・?
【金子】 や~まだぁー!
【山田】 な、なんだよ・・・。
【金子】 ヒマだからさ・・・。 どっか行こう、って・・・誘え!
あなたは、ご自分の姓に不満を持っていませんか?
【────】 いらっしゃいませ。 ────銀行へようこそ。