この商店街を魔界の力で過疎商店街に変えてやるのだ!
そやつを吊るせ、デビル軍団!
敗者の惨めな姿──戦いに破れた、あわれなサンダー☆タケルの姿を衆目に晒し、人間どもに我らの勝利を伝えてやれ!
パッギョー!
ぶらーん……。
いい眺めだな、サンダー☆タケル……干からびるまで、アーケードの装飾となるがいい!
よし……次は鉄条網に電流を流し、地雷を設置しろ!
ブブ、ブブブブブー、ブブブー、ブブ、ブブブブブブ、ブッブッブー!
そして……人間どもを捕らえろっ! ここから一人も逃すな!
パギョギョー!
ううっ……もうおしまいだよ……助けて、お姉さま……。
くそっ……こんなときに何もできないなんて……俺に戦う力があれば……。
うおおおおおおーっ! カレーの材料をよこせぇーっ!
ぱぎょ。
おう、そこのクマ!
てめえは八百屋か! なんでもいいから、カレーの材料をよこしやがれ!
ぱぎょー。
……うわ。なんだいきなり? はなせっての! 何しやがるつもりだ!! ふざけんなコラァ!
ぱぎょぱぎょ。
ううっ……家に帰りたいよぉ……。
この鉄条網のせいで、商店街に囚われの身か……。
私たちだけじゃなくって、外を歩いている人たちもどんどん捕まっているみたい……。
また一人、捕まったみたいだぞ……。
……はなせって言ってるだろーが! いい加減にしねえと、手のひら煮込んで食うぞコラぁ!!
反抗的な人間が、まだ残っているようだな……。
テメェがボスかぁーっ!?
くだらねえことしやがって! こんなことされちまったら、カレーが作れねえんだよ! 勝負しやがれってんだ!
よかろう……貴様をみせしめにして、カレーとやらの材料にしてやるのも面白そうだな……。
5秒で返り討ちだぜぇっ!
ううっ……負けた……5秒でっ!
テメェ、ズルいぞ! なんか卑怯な技とか使いやがって!
デビル軍団、こいつをカレーにしろ。
カビたみかん、南部せんべい、大師名物ダルマサブレー、死んだネコ、ミドリガメ……。
魔界カレーの仕上げには、この変な虫も入れてやれ!! そうして、じっくりコトコト煮込んでやるがいい!
ぱぎょぎょー。
くるな、クマ野郎! カレーになんかされてたまるか! まだ、あいつに返事だってしてねえってのに──。
俺、ずっと待っててやるからよ!
(そうだ。まだ返事も……何も言ってないじゃないか……)
(それに……タケルに……カレー作ってやんなくっちゃ!)
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああっ──!!!
……お姉ちゃんパーンチッ!
ぽふっ。
ぱぎょ?
このっ、このっ、このっ……こいつ、てめっ、倒れろっ、くの……。
ぱぎょぎょー?
ぜはー、はぁっ、はぁ……ハァハァ、このっ、このっ、このっ……。
無様だな、人間。
だが、もうあきらめろ。人間ごときの力では──。
うるせぇーっ!! 黙りやがれっ、このテンカス野郎がぁー!
テメェらなんぞ、うどんにぶっかけて食うぞコラぁ! 人間様ナメてんじゃねえっ! 香川県民呼んで脳ミソ吸い出させっぞぁ!
やれやれ……愚かなものだな、人間というやつらは……。
う、うう……。
こ、ここは……。
そうだ……あいつらに……ブラックサンダー☆タケルに負けちゃって……。
このっ……てめえらなんかに、てめえらなんかにっ……チクショーッ!!
お姉ちゃん、何してるの……?
あの人……まだあきらめないんだね……。
もうおしまいだってのにな……。
お姉さまさえ、いてくれれば……。
タケル様が生きていてくれたら……。
(……タケル……タケル!)
(……聞こえているか? 今から私に残ったすべての魔力を使って、ここからおまえを逃がしてやる)
(それから、力の続くかぎり戦って……一人でも多くの人間をここから助け出そう)
(それが、おまえを戦いに巻き込んでしまった……私の罪ほろぼしだ)
(すまなかったな、タケル。私を許してくれ──)
ボクを逃がす、って……。
ダメ……だよ。そんなの……だって、まだ……。
どけよっ……このっ、クマ野郎ぉ……カレー……そうだよ。タケルにさ……カレーを……。
へへ……タケルに、カレー作ってやる……って……決めたんだ……だ、から……よ……。
お姉ちゃんのカレー……!?
……いけないっ!!
そんなことは、ボクがさせないっ!!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
なんだ……?
やつの体から……さっき倒したはずのサンダー☆タケルから伝わる、この大気を震わせるほどの闘気は……!?
ま、まさかっ……!?
キラーン☆彡
豪誕! 魔法少女サンダー☆タケル!
台所の平和を守るため! お姉ちゃんにカレーは作らせない!!
ブラックサンダー☆タケル!! ついでにあなたの悪事にも、ここで終止符を打たせてもらうわ!
さっき負けたばかりだというのに、ずいぶん大きな口をきくのだな。
くっ……。
デビル軍団、この哀れな死に損ないをもう一度……。
うおおおおおっ……テメェら黙って見てんじゃねー!
そこらの大根でもバールのようなものでもなんでも構わねえっ!
なんでもいいから、このクマ野郎をぶちのめせぇーっ!
ドカッ、バキッ、ボガッ……。
ぱぎょぎょぎょ……ぎょー……。
こいつら意外とよえええーっ!
そうか……よく考えたら、タケル様の学生プロレス攻撃でけっこう弱ってたからな!
反撃だぁーっ!
人間の力を……思い知らせてやるぜ!
バカな……こんなことが……。
たかが人間ふぜいに、なぜ……。
人間の心……ちっぽけなその心を結びつけている絆の力をみくびったこと──それこそが、あなたの敗因よ!
うるさいっ! 貴様を倒して、もう一度……人間どもを支配するまでだ!
そうはさせない!!
サンダーアトミックスープレックス!
こんな技……クラッチを切れば……。
ブラックサンダー指砕きィ!!
ぐぅっ……。
……なぜだっ! なぜクラッチが切れない!
このクラッチは……誰にも切れない!
平和を願う人々の心が…… 人の優しさがこめられているからっ!!
このクラッチが── 私とみんなをつなぐ絆だから!
ば……バカなっ……そんなもので……。
そんなもので、この私が……敗れるというのか!?
高角度──落下ぁーっ!!
この角度……初代っ!? いや──中西!
ズゴーン!!
いやぁもう、苦労したんだぜ。カレーの材料、買いに行ったらさ……。
うんうん。
……まあ、晩飯作りながらゆっくり語ってやるよ。おい、ちょっとそこ通してくれ。
ダメだよ、お姉ちゃん。
なんでだよー、ちょっとカレー作るだけだって。な、おい。カレー好きだろ、カレー。うんまいぞぉ。
うん。大好きだよ、カレー。
でも、お姉ちゃんのカレーだけは別ですから。
べ、別ってなんだよ。
なんだ? 前にカレー作ったときに、三日三晩寝込ませたことか……?
それとも、その前の……救急車に乗せてやったこと……とか、かな……。
それとも……。
全部。
全部だよ、お姉ちゃん。 お姉ちゃんのカレーを食べて、ボクが何回病院に入れられたか、忘れたとは言わせないよ。
大丈夫だって。今度はうまく作るからさ。味見も自分でするし。食べたら肌が青くなったり、口から泡がでっぱなしになるようなのは作らねえよ。
そんなだから、お姉ちゃんに料理はさせられないんだよぉ~。
バッカおめえ何言ってんだよ。姉ちゃんな、今日男から告られて調子いいんだって。だからさ……。
街の平和は守れても、台所の平和を守るのは難しそうだ!
だけど、負けるなサンダー☆タケル!
お鍋の底はコゲつかせるな!
二日目のカレーが、どうしてあんなにおいしいか科学的に説明できたら、ノーベル科学賞をあげてもいいんじゃよ。
これから毎日カレーを食おうぜ!