ーー地球調査の帰還命令が出て、私は調査船団へ戻らなければならなくなりましたーー
……。
どうしたんだ? ナナミ。元気ないぞ。
う、うん……。
あのね……、お兄ちゃんとお父さんとお母さんに聞きたい事があるの。
なんだ?
なんだい? ナナミ。
言ってごらんなさい。
もしも、だよ? もし、ナナミがどこか遠くに行っちゃったら、どうする?
うわっ! またナナミの変な話がはじまったよ。
まじめに聞いて!!
わ、悪かったよ。
そりゃ、さみしいよ。妹がどっか行っちゃうなんてさ。
なんだ? 海外留学でもしたいのか?
お父さんとお母さんは?
ナナミは大事な娘だ。どこかになんか行かせん!
はっ! ま、まさか!!
好きな男ができて駆け落ちして、遠いところへ行くつもりか!?
父さん、そんなのゼッタイ許さんぞ!!
お父さん、妄想しすぎ!
ナナミちゃんは家族なのよ? どんなに離れいても、ナナミちゃんは私たちの家族。
どこかへ行っても、私たちはナナミちゃんを忘れたりなんかしないわ。
だって、かわいい娘なんだもの。
そうだぞ、ナナミ。だから、そんなつまんないこと言うなよ。
うっ、うっ。
うわあああんっ!!
ばたばたばた……。
なんなんだ、あいつ?
なにかあったのか?
まあ、年頃の女の子ですし。
隊長! 隊長! お聞きしたいことがあります!! 応答してください!!
なんだ? ナンバー773。
帰還するとき、わたしに関わった地球人から、わたしの記憶を全て消さなければならないって本当なんですか!?
イレギュラーなケースを除いて、そういう決まりになっている。それがどうした?
記憶を消さずにおくことはできないんですか!!
できない。それは、この星の内政への干渉となる。銀河連邦は、それを許さない。
そ、そんな……。
我々の使命を忘れたわけではあるまいな?
我々の目的はあくまで、この星の調査だ。惑星間の政治を扱っているわけではない。
わかっているな? ナンバー773。
はい……。
ーーわたしは、お兄ちゃんたちに真実を告げることにしました。だって、どうせ記憶を消してしまうのだからーー
第五話へつづく