学園都市 アポロ 魔導師、異端者の暴動を憂いた一部の両者と国が手を組んで作り上げた海上都市
日本の南側に作られており、兵庫県の一部として国に認可されている
半径50kmほどある巨大な学園都市には、全国から集められた約500人ほどの学生たちが生活していた
これほど巨大な理由は、学生が暴れても一般人が安全な場所へと逃げることが出来るように考慮されているためである
コンビニやスーパーはもちろん、本屋やゲームショップなども存在している これらの経営は一般人が住み込みで働くことで成り立っていた
そしてメインである学園 小等部から高等部までの学生は全てこの学園”アポロ”にて勉学に励んでいる
魔導師も異端者も同じ校内で過ごしているも、内容の違いからクラスは別となっている
なので休み時間や放課後のみ顔を合わせることが出来、学園側としては出来るだけ手を取り合ってほしいと思っていた
しかし魔導師は異端者を 異端者は魔導師を忌み嫌っており、度々問題を起こし、死傷者が後を断たなかった
そこで学園側は妥協案を作り上げた それは”休み時間内、もしくは放課後であれば戦闘を許可する”ことと
”学生間の抗争による魔導師および異端者の死傷は学園が責任を負わない”というあまりにも無責任なものであった
しかし生徒たちはそれを了承 お互いの鬱憤を日夜晴らしあっていた
それでも学園を卒業する頃には一般人に対してはちゃんとした態度で対応するように教育はされているのであった
そんな学園都市に、一人の男が船に乗って上陸した そこからこの物語は始まっていく・・・
うっぷ・・・あのおっちゃんの運転荒すぎるだろ 乗り物酔いしない俺でも気持ち悪いぞ
俺はふらつく足取りで港を後にする 少し歩くと民家が見えてきたが、どう見ても誰かが生活している様子は見られない
ここがアポロか たった100桁前後の魔力持ちを育成するために作られた巨大都市・・・
魔法の研究のためとはいえいくらなんでもでかすぎるだろ 歩いても歩いても人っこ一人見当たらないぞ
そう、港から10分ほど歩みを進めるが民家ばかりあって人の姿は一切見られない 一軒家のベランダを軽く覗き込む
しかし家の中はもぬけの空、家具が一切置かれていなかった
・・・おいおい、何のために建ってんだこの家 住まなきゃ家なんて建ってる意味ねーだろ
いぶかしみながら歩き続けると、海が見えなくなる そして商店街らしき場所に足を踏み入れると、この都市で初めて人の声が聞こえてきた
道は誰も歩いておらず、店へと目をやる どの店内も暇そうにしている大人がいるだけであった
俺はやっと見つけた道を歩く人へと声をかけ、目的地の場所を聞くことにした
あの、すみません 学園アポロって何処に行けば・・・
あん?もしかしてあんたが転校生かい? 学園ならこの商店街真っ直ぐ抜けた先にあるよ
・・・奇抜なファッションしてますね ここらで流行ってるんですか?
声をかけた男と思わしき人は、ダンボールを顔に貼り付け、目と口の部分だけが穴をあけられていた 子供がヒーローごっこでもするような感じである
はっはっは、これは私の趣味だよ それより急がなくていいのかい?アポロってここから20km先だけど
遠っ?!何時間歩けっていうんだよ 全く何考えてこんな無駄にでかく作ったんだか
ま、そういうなよ 俺ら一般人の安全のためでもあるわけだし 急ぐっていうなら俺のバイクに乗せてやろうか?
あー、すみません 申し訳ないけどお願いしていいですかね?
そうか、よしそこに止めてるやつがそうだから早く乗ってくれ
・・・おい画像間違ってるだろこれ
気にするな、とっとと乗ってけ少年
今の見せられて何処に乗るか聞きたいんだが まぁよろしくお願いします
バイクに二人乗りさせてもらい、商店街を抜けると林道へと出た 人工都市のはずなのにどうやってここまで育てたのだろうか
お兄さん、こっち側はえらく自然が多いですね 何か理由が?
あぁ、それは環境保全という名目と・・・そうだな 学生の隔離という意味合いもある
今から行く君に言うべきものじゃないが、あの学園は本当に危険だ 俺たち一般人は本当は近寄りたくないんだがな
ははは・・・分かりますよ この力がどれだけ凶悪なものかくらい、身を持って
すまないね、君が悪いわけじゃないのに変な空気にしちゃって ところで君はどっちだい?
あ、俺ですか?異端者のほうですよ 能力はまぁ・・・割合させてもらいます 聞いて気分のいいものじゃありませんし
そうかい 君がいつまでここにいるかは分からないが・・・応援してるよ、頑張ってくれ
ありがとうございます ところでさっきからずっと気になってたことがあるんですが
俺はバイクにまたがった辺りから気になっていたことを聞いてみることにした
お兄さんヘルメット被るときもダンボールつけたまんまだったけど・・・窮屈じゃないっすか?
大丈夫だ 俺にとってこれは日常茶飯事だからな
どうやらこの都市には道路交通法というものは存在しないようだ 大丈夫かここ
お互い無言になり、しばらくバイクを走らせていると、林道を抜けて橋が見えてきた
バイクは橋の手前で止まり、お兄さんはその先を指差した その指の先には巨大な校舎が見えている
もう見えてると思うけど、そこを真っ直ぐ行けばアポロだよ 申し訳ないけど俺はこれ以上近づけないからここで降りてくれ
いえいえ、お手数をおかけしました ありがとうございます
俺の言葉に軽く手を振り、お兄さんはそのままUターンして元来た道へとバイクを走らせていった
さてと・・・とりあえず早めにつけたのはラッキーだったな しかしあのお兄さん変わってたな
お兄さんも変わっていたが、これから俺が向かう学園も変わっているのだろう 確かに前いた学園では魔導師も異端者も恐れられていた
先程のお兄さんは気丈に振舞っていたが、肩と声がかすかに震えていた 多分どちらかの力を一度目の当たりにしたのだろう
・・・怯えた目、か 嫌なもん思い出したな
俺は首を振って意識を切り替える 右手に巻いた時計を見やる あたりには誰もいないが、時刻は8時20分 学生たちが登校しているべき時間だ
ま、何があるかはしらねぇがとにかく行くしかねーわな
俺は頬を叩いて気合を入れ、学園へと歩みを進めるのだった
でっけー・・・校舎の端から端が見えねーぞ
俺は校門の前でまぬけな顔でぽかーんと口を開いていた 現在生徒は確か500人、それを収容するにはあまりにも大きすぎる
ポンポン、と肩を叩かれ、俺は振り返る そこには、私服姿の女の子が立っていた
くりっとした目と、腰まで伸びた黒髪が特徴的な女の子だ 大人しそうな雰囲気を漂わせている そして何より”可愛かった”
あの・・・学園に何か御用ですか? 制服を着ているので学生だとは思いますが
あぁ、実は今日ここに転校の予定でね ところで君は?私服姿だから学生ではないようだけど
ふふっ、私もこの学園の生徒ですよ ここ規定の制服が無いので私服で来てる人多いんです
マジで?!そんなの聞いてねーよ・・・ 俺転校初日から浮くじゃねーか
でも色んな制服を着るのが趣味だーって子もいるのでそこまで浮かないと思いますよ この前メイド服?を着た子もいましたし
・・・なんでもありだなこの学園 あっとそうだ、君の名前は? 俺は刈谷 夏樹(かりや なつき)
刈谷さんですか、よろしくお願いします 私は添富士 笑夢(そえふじ えむ)と言います
添富士さんか、よろしくな ところで君はどっちの存在? 学園では魔導師と異端者で分かれるらしいから一緒だと嬉しいんだけど
私は魔導師ですよ 刈谷さんはどっちなんですか?
あぁ魔導師だったのか・・・俺異端者だから別になるな 色々教えてもらおうと思ったのに
ふふっ、私でよければいつでも聞いてくださいな 基本的に一人なこと多いので
彼女の一人が多いという言葉に少し引っかかったが、俺はあえて聞き流すことにした
助かるよ、添富士さん ところで君はどんな魔法が得意なんだ?
得意・・・といいますか、私は一つの魔法しか使えないんですよ それも”花”の魔法しか
へぇ、花?えらく可愛らしい魔法なんだな でも君に似合ってると思うよ
似合ってる・・・ですか ありがとうございます・・・
褒めたつもりだったが、なぜか彼女は肩を落とし顔を伏せた 何か変なことを言ったのだろうか
私、この学園で落ちこぼれって言われてるんです 戦闘能力の全くない花の魔法しか使えないから
・・・そっか、無神経なこと言って悪かった でも使えないうんぬんじゃなくて、君に花の魔法は似合うと思うよ
その・・・可愛らしいしさ、添富士さん
わ、私が可愛らしいですか?!そそそそんなことありませんよ?!
いや、可愛らしいさ 少なくともこの学園での楽しみは一つ見つけれたくらいにね これからもよろしく
は、はい!よろしくおねがいしまひゅ!
思いっきり舌を噛んだ彼女は、体をくの字に曲げながら俺へと手を伸ばす 握手のつもりなのだろう
真っ赤になった顔を可愛いと思いつつ、俺は手を伸ばそうとすると、くすくすと笑い声が響いた
あら、落ちこぼれがナンパにあってますわ あんな人をナンパするなんてたかがしれていますわね
ですねー というか見ない顔ですけど、もしかしてあれ噂の転校生じゃないですか?
転校生?あぁあの汚らわしい野蛮な異端者ですか 落ちこぼれ風情にはお似合いですわね
きゃははははは!言いすぎだよ優香ちゃん でも本当に汚らしいですよね
まぁでも本当に屑同士お似合いじゃないですかー? 魔導師の屑と社会の屑ですし
はっ、どっちもゴミ処理場にでも運ばれればいいですわ 行きましょう憐
けたけたと笑いながら校舎へと消えていく二人組の女の子 見た目の幼さから多分中等部の子だろう
彼女は自分より年下の相手にすらああやってこき下ろされているのか?そんな心配をしていると、彼女の眼にはうっすらと涙が浮かんでいた
意気消沈したように軽くため息をつくと、力を無くしたようにゆっくりと手が下ろされていく
(・・・彼女はずっとこんな場所で生活していたのか?もし今ここで何も出来なければ、彼女は何も変われないかもしれない)
俺はすぐ様下ろそうとする手を握り締め、彼女へと一歩近付いた
か、刈谷さん?!
・・・これからの学園生活、よろしくな 情けないけど、俺には君が頼りなんだ
俺は精一杯の笑顔を彼女へと向け、空いた手で溜まった涙を拭ってやる
真っ赤になった彼女の顔は突然のことにキョトンとしていた しかしそれはゆっくりとほぐれ、花のようなほころんだ笑顔を見せた
・・・はい!こちらこそよろしくお願いしますね、刈谷さん!
彼女、添富士さんと出会ったことは本当に幸運だと俺は思った
先程の奴らの態度を見るに、一波乱あるかもしれない でも、こんな可愛らしい笑顔が見られるなら、頑張ってもいいと思える俺は
とても単純なのだろう だがそれでもいい 複雑に考えすぎて、またこの”力”で人を傷つけるよりは、ずっと・・・
はい、ありがとうございましたーってなんじゃこりゃ!
また私たちの立ち絵は無しっすか・・・まぁいいけどさ
はぁ・・・いつかまた私たちが日の目を見ることはできるのでしょうか?
・・・気長に待つしかないよ