(……信じたくない、信じたくないが……この馬鹿は本当に俺の部屋のベッドに潜り込んで来やがった)
ちょっと待った、今失礼な事を思っただろ?
お前エスパー?というか読心術でもやってるのか?
そんなものに頼らなくたって君の考えてる事ぐらい分かるよ。
ずっと一緒に居たからね。
ここで幼馴染の仕草にドキッとする所だがそんな事は無かった。
声に出して言うな!!後ドキッとしろ!!
押し付けるものじゃないだろ!! ただでさえベッドの中で密着してるというのに……っていうかこっちに寄り過ぎだ!!
何を今更……小さい頃はよく一緒に寝たじゃないか、恥ずかしがる事なんてないぞ!!
それは昔の話だ!! つーか恥ずかしがれ!!年頃の男の寝床に警戒心無しで入ってくるんじゃない!!
ほう?だったら私をおそ……
おい馬鹿止めろ。 何だお前は、夜だからテンションでも上がってるのか?
本当に妙なタイミングで素になるんだもんなー……。
思ったんだけど、いつまでそっぽ向いてるの?
お前が帰るまでだ。
ふーん、じゃあ私は君がこっち向くまで帰らないよ。
お前って奴は……!!
お!?今の突っ込みでこっち向いたな!?
なっ!?しまった!! つい勢いで向いてしまった!!
そーれ!!
わっ!!馬鹿!!抱き着いてくんな!!
断る!! 久しぶりに君の胸に埋めさせてもらうよ!!
モゾモゾすんじゃねぇ!! くすぐったいだろうが!!
ふむ……うん、やっぱり落ち着く。
こっちは落ち着けないっての……、全く。
えへへ……。
(……もう疲れた……このまま眠ってしまおう……)
……ねぇ。
……もう寝ちゃったの?
……全く、図太いんだか何だか……こんな状況でよく眠れるもんだ。
……落ち着いたと言ったけど、あれは嘘だよ……だって……。
……君だって私の事を抱き返してるじゃない……。
……さっきのはちょっと語弊があるね……落ち着かない訳じゃない、むしろ安心……安心できる……。
さすがに君が死のうとした時は……怖かったけどね……。
……でも、今は違うんだ。 こんなにも君が近くに居る……。
……もう……私の前で死のうとしないでよ?……お願いだから。
(……全部声に出ていたのを聞いてしまった……)
(……本当は分かっている……分かっているんだこんな生活を続けちゃいけないのは……)
(……いや……分かっているつもりだった……だが俺は何一つ分かっちゃいない)
(こいつがどんな思いで俺に構っていたのか……何一つ分かっていなかった……)
(……どうすればいいんだ俺は……)