おはよう。 今朝も早いのね。
誰もいない教室が好き?
ずいぶん変わっているのね。
まあ、それほど悪くはないけれど。
静かで…… いつもの騒がしさが嘘みたい。
私も変わっている……って、 ……そうかもね。
お、おはよ……。
…………。
ねえ……。 今、誰かと話してなかった?
どうしてそんなことを思うの?
んと……廊下で 声が聞こえたから……。
気のせいじゃない?
そうかな……。
だって、私以外に……。
誰の姿も見えないはずだよね。
絶対に何かいるって……。 おかしいよ、この教室。
まだそんなこと言ってるのかよ。
だって、このまえさ……。
あの机が……私の机と、 勝手に入れ替わってたんだよ……。
なにかがいるんだよ。きっと。
私たちに、よくわからないものがさ。
私も、そんな気がするんだ。
うまく言えないけど……。
バカバカしい。
でも、そんなに気になるならさ。
放課後になったあととか そのくらいがいいのかな……。
目立たないタイミングで 片づけておいてもらうとか……。
先生に頼んでおけばいいじゃないか。
やっぱりあなたのことは、 みんなには見えていないみたい。
私には、もちろん見えているよ。
昔から、ずっと一緒だったからね。
あの頃のあなたは、 みんなにも見えていたのにね。
いつからだったかな……。
私が何を言っても、 誰も気づいてくれなくなったのは。
お父さんも──。 お母さんも──。 学校の先生も──。 仲の良かった友達でさえも──。
『そこには誰もいないよ』
って…… 必死な顔で言うものだから……。
私も、見えないフリを 続けてきたけれど……。
だけど、私も見えるだけ。
あなたが誰か、なんて…… 私もいつのまにか忘れてしまってた。
ねえ、私にだけ教えてよ。
あなた誰なの?