ハラ減ったなあ・・・。
母さん、メシはまだぁ?
はいはい。
ご飯なら、もうすぐできるわよ。
今作っているところだからね~。
それじゃあ、お母さんと一緒に食器の用意でもしましょうか。
ちょっと! 自分だけ抜けがけしようなんて、ズルいわよ。
そうよ。 食器の用意は私と二人で・・・。
やめてください! 今は私が、この子の母親なんですっ。
いや、あの・・・。
母さんたち・・・ケンカ、しないで。頼むから・・・。
やれやれ・・・。
オヤジが死んでから、毎日これだもんなあ・・・。
オレを産んでくれた母さん。
オレを育ててくれた母さん。
そして、オヤジが死ぬ直前に再婚した相手────つまり、今の母さん。
ようするにオレには、三人の母さんがいるわけだ。
今日は母の日かぁ・・・。
こんな日に、あの三人を相手にするなんて・・・どう考えても無理だ。
だがしかし、幸いなことにオレには特別な力がある。
洗面所にある、何の変哲もない鏡。
ここを通って、鏡の中の世界に行くことができる────。
ふぅ・・・。
これで、こっちの世界で今日だけやりすごせれば・・・。
あら。 鏡なんか見ちゃって、どうしたの?
か、母さん・・・。
あなたも年頃なのね。 母さん、ビックリしちゃったわ。
鏡の中の世界にも、もちろん母さんがいる。
ちょ、ちょっとオレ・・・でかけてくるから!
わっ!?
ど、どうしたの? そんなに急いで・・・。
ご、ごめん! 母さん、オレちょっと用事が・・・。
オレにも理由はよくわからないのだが、鏡の中ではこの人もオレの母さんであるらしい。
くっ・・・ここを通り抜ければ!
そこまでだよ。
母さんを出し抜こうとしたって・・・そうはいかないんだからね。
今日はたぁ~っぷり・・・親孝行してもらうんだからぁ。
さあ、こっちへいらっしゃい・・・。
う、うわぁぁぁぁーっ!!
母さんたちに囲まれた瞬間────。
オレの能力は限界を超えて、さらなる力を発揮したようだ。
こ、ここは・・・。
オレの能力で、宇宙にまで来ちまったっていうのか・・・?
いいえ。 あなたを呼んだのは、この私。
お、おまえは・・・何者だ?
私は大宇宙の創造者・・・。
すなわち、この宇宙に生きるあらゆる生命を生み出した存在────。
つまり、あなたの母さんよ。
おまえもかよ!