『銃が蔓延り、煙草の高騰した世界』

20XX年

百二十数年前、 北なんとかとかいう国が 核ミサイルをぶっ放した。

標的はアメリカ。

世界は一気に緊迫状態に陥り、 とうとう局面は 第三次世界大戦を孕んだ。

恐慌状態の世界は めまぐるしく変化を遂げ、

森林破壊だのエコだの みんな言わなくなった。

第三次、というか大惨事だ。

世界人口は二十億人にまで減少、

深刻な温暖化で海の氷が急速に解け 日本などの島国は沈んだ。

至る所で砂漠化が進み、 人間以外の生物も 絶滅が近づいている。

日本という島国は消え失せたが、 一応日本国と日本人は現存している

煙草、今俺が吸っている煙草だ。 いまの世界では大変貴重なものだ。

兵士の死期を早める、 という理由で煙草が規制され始めた

それに伴って 煙草の値段も跳ね上がった。

身近なところで。 マイルドセブンなんかは 日本円にして5000円もする。

約百年前の十倍以上あるらしい。

その代わりに銃が蔓延った。

いまやそこら辺のクソガキも 銃を携行してやがる。

それが世界の現状だ

俺は兵士としてこの地に派遣された

土地の名前すら知らない。

空は灰色。死灰の色だ。

爆撃機だか戦闘機が 馬鹿でかい音を鳴らして飛び交う。

一応、 潜入ということになっているが、 隠れるつもりはない。

オい……上等な身分だなァ… 煙草なんて吸っちゃってよォ、 おっさん

二十代前半に見える男は 狂気の色を目に浮かべ、 懐からショットガンを取り出した。

オラァ! さっさと金目の物を置いてきな!!

牽制に、散弾を空に撃った男。 戦闘機の音に新たに爆音が加わる。

………

そんな俺たちを、 後ろから少年が見ていた。

何見てんだガキィ!!

少年が慌てて避ける。 散弾が少年の居た場所を貫く。

……お前、いま何をした?

アァン? 邪魔だから撃ったんだろうが

俺は即座に踏み込み、 男の背後に回ると同時に手首を捻る

ウガァ!! いてぇ!なにすんだてめぇ!

ガキを撃つような 屑に渡す煙草はねぇんだよ…!

懐から拳銃、 慣れ親しんだコンバットリボルバーを取り出し、躊躇いもなく男を殺す

悲鳴もあげず、男は死んだ。

わぁ、助けてくれて ありがとうございます!

………やっかいな奴とは、 まず目を合わすな。

だって……

気になったんだよ。 おじさん、煙草持ってるし…

どうして煙草を持っていると 気になるんだ?

だって…もしかしたら おこぼれで煙草が 貰えるかもしれないだろう?

こんなご時世だ。

当然、未成年喫煙者もいる。

しかもほとんどがヘビースモーカー

彼らは生きる気力を 煙草にしか見出せないのである

ほら、キャビンだ

さすが! 気前いいなぁ、おじさん!

あ、火。貰っていいかな

………自分で点けな。 そのライターはやるよ。

最近ライターが なくて困ってたんだよ! あんがと!

………ふぅ、煙草はいいね

………………

それじゃあな

うん

翌日、通りかかったあの街路。

そこに俺が少年に 渡したライターが転がっていた。

きっと。 死んだのだろう。

俺が戦場でだって、 いまだって煙草を吸っているのは

さっさとこの世界から おさらばするためだ。 自分の手でな。

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公開日 2013/04/22 21:02 再生回数 14

作者からのコメント

おー怖い怖い。ちなみに僕は煙草を嗜まない。

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