良い天気~♪ こんな日は散歩に限るわね!
あの人、何してるんだろう・・・。平日のこんな時間に・・・。
もしかして、会社クビになったことを家族には言えないから、ここで時間を潰してる人・・・?!
違うわ、莫迦者ッ!
そうなんですか。アナタがそう言うんならそうなんでしょう。アナタの中ではね。
で、ここで何されてるんですか?
ふふふ、聞いてくれるか?
今度開かれる会社のお花見会の場所取りよ。
え~! まだ桜咲いてないですよ~? そのお花見はいつやるんですか?
2週間後だ。
2週間後!? いくら何でも早く来過ぎじゃないですか?
いや、ここで場所取りし始めたのは2ヶ月前からだ。
お正月から何やってんの? どれだけ暇なの?
ウチの会社は、1年に1度のこの花見に社運をかけているのだよ。だからお花見特命係である俺がここを絶対死守しているのだ。
お花見特命係? 窓際社員みたいな? よくわからないけど。
まぁ色々あるのさ。
特にこの桜の木周辺は人気スポットだから、他の奴らも狙っている。
あの茂みを見てみろ。
誰かいますね。
アイツらは俺がここを離れた瞬間に、このスペースを奪おうとしている連中さ。
穏やかじゃないですね。皆さんそんなにこの桜の下が良いんですか? 公園で一番キレイに咲く桜だからとか?
桜なんて咲いていればどこでもいいのさ。俺たちがここを守る理由・・・それは・・・
ドーーーン!
何?! 爆発?
奴らめ、実力行使に出てきたか!
せっかくの桜が!?
もうお花見どころじゃない!?
桜なんてまた咲かせればいいってことよ。
秘技★桜吹雪!
カッ!!
ふっ、奴らは散ったか。
な、な、何してんですかー! もう公園の面影なくなってるじゃないですかーっ!
桜も公園もホントはどうでもいいのさ。
じゃあ何故こうもここを守りたがるんですか?
それは・・・。
ザクッ ザクッ
急に穴を掘り始めてどうしたんですか?
出てきたぞ。
ひっ、骨!?
お、お、穏やかじゃないですね! 一体誰の骨・・・、そして貴方達は一体何者?
ふっ、やはり覚えていないのだな・・・。
これは、お前の骨だ。
私の・・・骨? 何言ってるんですか?
お前は既にこの世に存在しない、という訳だ。
私・・・死んでる? じゃあ、今この身体は零体・・・。
俺たちはお前の墓の上で他人にどんちゃん騒ぎされなくないから、ここを死守しているのだ。
えーっと・・・その、ありがとうございます。
でもこれでもう、誰もここには寄り付かないだろう。安心して眠っていてくれ。
ポチ。
俺、犬だったのかよ。