・・・ん・・・くん・・・。
・・・コウ・・・コウスケくんってば・・・。
・・・コラー!! 起きろーっ!
うわぁ。
もー、コウスケくんってば・・・本当にねぼすけなんだから~。
だからって、あんな大声を出すことないだろ。
そのくらいしないと起きないコウスケくんが悪いんでしょ~っ。
わかったわかった。 そのぐらいで泣くなよ、七海。
あ、いっけな~い。
早く早くっ・・・。 急がないと遅刻しちゃうんだから~。
ちょっと待てよ。 今、着替えるからさ。
ば、ばかっ・・・。 レディーの前で、いきなり服を脱がないでよねっ!
外で待てばいいだろ。 先に行ってろよ。
も~。 急いで来てよね~・・・。
やれやれ・・・さわがしい幼馴染を持つと、苦労するな・・・。
あいつはオレの幼馴染み。
早瀬七海という名で、オレの家の隣に住んでいる。
ガキの頃から・・・ずっと一緒だったせいか、おたがい意識することもなく・・・いつも、そばにいることがあたりまえになっていた。
・・・ふわぁ。 やっと昼休みか。
も~。 コウスケくんったら、授業中ずっと寝てたでしょ?
ん・・・まあな。
まあな・・・じゃないよっ。 そんなこと言ってると、私・・・本気で怒るんだからね~。
悪かった悪かった。 とりあえずメシにしようぜ。
あ、うん。そうだね。 どこで食べようか。
んー・・・今日は屋上、かな。
今日も弁当がうまいなあ。
オレの両親が海外出張で、七海の母さんの弁当が食えるってだけで、オレは幸せだなあ。
あ、あのね・・・コウスケくん。
ん? どうしたんだ。 なんか思いつめたオーラ出てるぞ。
う、ううん・・・やっぱり、なんでもない・・・。
そうか。 ところで、そのエビフライ食っていいか?
ダメだよー・・・って言ってるそばからもう食べてる~っ! コウスケくんのばかぁ~っ。
オレと七海は、ずっと幼馴染の関係で・・・。
そんな関係が、ずっと────ずっと続くと思っていたんだ。
引越し・・・だって?
いきなり戻ってきたオレの両親は、さも気軽そうに「お隣の早瀬さんが引っ越すから、ちょっと挨拶にな」などと言いやがった。
そうだとしたら────。
どういうことなんだよ、七海。
おまえの家の引越しのこと・・・オレ、聞いてなかったぞ。
なんで・・・なんで言ってくれなかったんだよ。
屋上で、お昼ご飯を一緒に食べたときに・・・。
あのとき、七海は────。
言いたくて────。
言いたくて────。
それでも、口に出せなくて────。
オレは────わかってなかったんだ。
同じ空を見て────。
同じ星を見て────。
二人でずっと、同じ世界を見ているはずだと思っていたのに────。
もう────オレの見ている世界に、彼女はいない。
早瀬七海という存在が消えてしまったかのように、オレは────。
ひとりぼっちの世界で、生きていかなければいけないのだろうか。
このまま────。
ずっと────。
一人で────。
コウスケくーん・・・。
え・・・な、七海?
どうして、おまえ・・・。 引越しは?
ふふっ・・・私ね、コウスケくんの家の近くで、一人暮らしすることにしたんだ。
そ、それじゃあ・・・。
うんっ。 だから、これからもコウスケくんとずっと一緒だよ・・・。
ずっと、ずっと・・・一緒だから。
七海、オレ・・・。
おまえに・・・言わなきゃならないことがあるんだ・・・。
オレ、おまえのことが・・・。
そして、二人の時間は────。
ずっと、ずっと────永遠に。