ダメね・・・。 この三十連結合摩訶式結界、私には破れそうにないわ。
霧雨さんでも破れないんじゃ・・・オレらの誰にも無理だろうな。
カラオケボックスに満ちた歌声を妖獣たちが呪力に変換して、結界を強化してるんだっけ?
こりゃあ、妖獣どもにまんまとしてやられたって感じだな。
みんなでカラオケに来たら、とんだ災難だねえ。 誰もここから出られませーん。
なんで、おまえらそんなに楽しそうにしてるんだよ・・・。
ほっとけば助けがくるんじゃないの?
もしかしたら、他の部屋にいる一般人は、何人か妖獣どもに食べられちゃうかもしれないけどね~。
それは、ちょっとマズいんじゃないかなあ・・・。
静姫さんは真面目だなあ。 一般人の十人か二十人ぐらいの犠牲は、このさい仕方ないよ~。
力の無い人が妖気にあてられちゃうとかって、よくあることだもんね。
サラッと・・・とんでもねえこと言ってるんじゃねーよ、おまえらぁ!
とにかくここを脱出して、やつらをなんとかしないと・・・。
私の烈風激壁氷華衝で換気ダクトから凍気を流して、何もかも凍りつかせるのはどうかな?
その何もかも、ってフレーズがあきらかにマズいだろ。そこで目ェそらすなよ。おい、如月。
・・・詔、オンマジュ・・・怨怒噴怒、合切衆生・・・シチリキ、サンポウリキ・・・。
闇牙くんの真空月狐狼牙閃って、空間とか斬れなかったっけ?
できるけど・・・あれ、美しく気高い乙女の生き血を吸わないと使えないんだよね。
やっべ。私じゃん。
こういう状況では仕方ないわね。
おまえら二人、あきらかに気高くも美しくもねえよ! それにその服装はなんだ? 中学生のカラオケにコスプレとか、やりすぎだろ!
あと、そこの静姫! オレらが相談してる間に、コッソリと覚醒状態で扉殴ろうとすんな! 耳出すな、耳!
我門、口悪すぎ~。
我門くんって、いっつも静ちゃんのことイジメるよね~。
もしかして、狙ってるとか?
いや、オレは別に・・・そんなつもりじゃ・・・。
私は我門くんが言うなら、なんでもそのとおりにしちゃうけどな~。 ほら、覚醒解除したよ~。
うわぁ。我門にめっちゃジェラシー感じるわぁ。
あれ・・・霧雨さん。 なんか機嫌悪くなってる?
わ、私は・・・。
あの・・・霧雨さん。えっと、その・・・もしかして、怒って・・・いらっしゃいま・・・す?
・・・ません。
我門のやつ、モテモテでうらやましいなあ。
だったら・・・おまえがオレのかわりに、なんとかしやがれよ!
えぇー・・・マジかよ。カンベンしてくれよぉ~。
頼むよ、電精使い。 おまえの天華千雷無塵掌なら、建物内の配線を通して攻撃できるだろ。
だから~・・・街中でうちの技をみだりに使うなって、実家から止められてるんだよ。
オレが技を使うと電器設備がブッ壊れまくって・・・修理の請求書が実家にくるからさ。入学式の件で、マジ勘当の一歩手前なんだぜ・・・。
そりゃあ・・・なんか、悪かったな・・・スマン。
我門、おまえいい加減にしろよな。 文句あるなら、自分でなんとかするべきじゃねえの?
またオレがやるのかよ・・・。
こうなったら、私の神魔殲界鬼爆殺でこの建物ごと・・・。
やめてください。 お願いします、龍我さん。
ここを・・・こうして・・・。
二人・・・私と、もう一人ぐらいなら・・・どうにか結界を通り抜けて、お店の外に出られるかも・・・。
しょうがねーな。ここは見せ場を我門に譲ってやるぜ! ヒューヒュー!
せっかく・・・我門くんと二人きりになれたのに・・・。
こんな時間に中学生が繁華街をうろつくとはな・・・。先生に抜刀させるつもりか・・・我門凶獣郎?
カラオケボックスに閉じ込めた人間どもを・・・我ら妖獣の餌にしてくれるウサ~!
やかましいっ!! 我の瞳に宿る魔力を浴びて滅びよ! ────滅皇波魔眼っ!