うららかな春の一日・・・
このへんでいいかな。
まずは敷物を出して、っと・・・。
オデン用のコンロをセットして、ワリバシもOK・・・っと。
ジュースとコップも用意して・・・。
うぅ・・・風があると、まだちょっと冷えるかな・・・。
でもまあ、サクラは満開だ。
はやくみんな来ないかなあ。
お~い・・・。
部長、もう来てたんだ。
もう準備はできてるよ。
さすがだねえ。
まぁな。
じゃあ、先に始めるとしますか。
そうだね。
あ。 オデン食べていい?
さっきコンロの火をつけたばかりだから、まだ温まってないよ。
いいよ。 私、猫舌だし。
ガンモ、コンニャク、ハンペン・・・それからスジをもらおうかな。
玄人っぽいチョイスだな。
だって部長が作ったんでしょ。
そうだけど。
あー、やっぱり!! 大根の面取りしてないじゃない。
だって、もったいないし・・・。
たぶん、タマゴも煮過ぎて黄身のところが黒ずんでたりするはず~。
た、食べてみないとわからないよ。
他の部員にでも、作らせればよかったのに・・・。
でも・・・。
でも?
うちの部って一年のうち、この時期しか活動できないからさ。
ついはりきっちゃうんだよね~。
わ、私に言ってくれれば・・・さ。
オデンぐらいは、いつでも・・・部活のときじゃなくっても・・・。
チィーッス!!
ウィーッス!!
おまえたち、元気いっぱいだな。
なんたって、我らが花見部の活動シーズンですからね!
元気になろうってもんですよ!
入部してから一年・・・この時期を待ってましたから!
待ちに待ってましたからねえ。
チェッ・・・あと五分、遅く来いよな。
どうしました、センパイ?
なんでもねーよ。
三年生たちは、まだ来ないのかな。
あいつら卒業してるからなあ。
去年はどうだったんですか?
私と部長が一年生だったときは、そのとき卒業直後の三年生たちがゾロゾロ来てたけどな。
今年は進学や就職がヤバそうな先輩たちばかりだったから、来ないかもしれないな。
まあ、あのアホどもが来ても騒がしいだけだしな。
そんなにヒドいこと言うなよ。
あいつら来ると風情ってものが・・・。
風情がどうした?
うわ・・・なんかスゲーの来た!
駅前の執事喫茶に就職が決まってな。
今日、ちょうど研修が終わったところさ!
そのまま来たんですか。 あ、ワリバシどうぞ。
食器は持参してきた!
それでオデン食うつもりかよ。
無論、そのつもりだ。
まあ、とりあえず座ってくださいよ。それから、就職おめでとうございます。
おいっすー。 もう始まってる?
わー。 お先に始めてま~す。
オツマミ持ってきたよ。
さすがだ!
さすがですよね。 先輩は手ブラですか? 食器だけですか?
そんな堅いこと言うなよ・・・。
ま、まあ・・・とにかく飲みましょうよ。ね、ね・・・。
そうだ飲め飲め~。
チューハイ持ってきてやったぞぉ。
OB来ちゃった・・・。
今年も朝までコースだな、こりゃ。
にぎやかでいいじゃないか。
まったく、こいつは・・・人の気も知らないで・・・。
え? 何か言った?
なんでもねーよ。 ほら、部長も飲め飲め。
なんか・・・この、ジュース・・・おかしな味だなぁ~。
芋、焼・・・酎? なんだこれ? ヤキイモのジュースか?
ちょ・・・!? それ、ジュースじゃないっすよ!
保護者がいるから大丈夫だよ。
そういう問題じゃないですよ!
にぎやかな部員たちの間を────。
春の風が、ふわふわと────。
おしまい