仮想ギルドツ~ル (Ver 1.6)
ギルドシステムが搭載されていない電脳空間において、無理矢理に仮想ギルドを作成する違法ツール……
なんだ、知っているなら話が早いわね。
あと『強制くん』もプラグイン済みの スペシャル監獄仕様だから悦びなさい。
うわぁ~い オレの人生オワタ
『ターゲットヲ、所属、サセマシタ。』
はい、強制登録完了。
ギルド設定はリーダーのみ変更可能。 もちろんリーダーはわたしね。
現在の設定は……
・ギルドメンバーへの攻撃判定/なし ・ギルドメンバーへの侵入/なし
・ギルド脱退時にリーダーの承認/あり ・リーダーから一定以上離れたマップ移動を制限/あり/300メートル
……ま、こんなところかしら。 何かご質問は?
君のことは何て呼べばいい。 さっき君に不正侵入した時、名前の項目は空欄だった。
そういえばそうね。
これといって今まで問題なかったから 気にも止めていなかったけれど……
う~ん、何て呼んでもらおうかしら。 名前かあ……
お捜し中の『お友達』には何て呼ばれていたのかな?
……え
…………
……ナナヤ、よ。
ナナヤ?
『778』でナナヤ……
……彼女にとってわたしは 778番目の『お友達』なんだってさ。
…………
どうせなら 777番目が良かったかな。
特別な番号だから 彼女も覚えてくれそうじゃない?
778番目なんて、きっと彼女のことだから、わたしのことなんて少しも覚えてはいないかもしれない……
…………
でも癪でしょ、そういうのって。 ズルイと思うのよね。
わたしの心は彼女に奪われた。 だから、わたしは奪い返してやろうと企んだ。
あんたに言われた通り、言い訳できないくらいに、わたしは彼女の虜なの。
でもそんな自分にも堪えられなくてさ、 そろそろ終わらせようと思ったわけ。
……以上よ。
…………
まさか君がこんなに自分のことを語ってくれるなんて思わなかった。
ちょっと驚きだ。
そんな風に感じるのは、あんたがいつも人の心に一方的に侵入してるからよ。
誰だって自分のことを 他の誰かに知ってもらいたいものよ。
それにわたし達は 曲がりなりにも仲間だから……
余計にそう思えたのかもしれない。 よくは分からないけれど……
…………
……OK。 じゃあ今度はオレの話をしよう。
ギルドメンバー欄にも表示されている通り、オレの名前は レイン=ハルト
レインでも、レイでも、何とでも 呼んでくれてかまわない。
そしてハッカー集団 『White Crow(白ガラス)』の一員だ。
数日前、メンバーのひとりが『White Crow』を裏切ってメインデータの大半を破壊。いくつかの重要なプログラムを抜き取って逃亡。
犯人の逃亡先はここ“どうぶつの森”
そして犯人は、たった今しがた ……君に捕まってしまった。
……以上だ。 何かご質問は?
…………
そうね、ひとつだけ いいかしら。
どうぞ。
この違法空間にアクセスしたわたしは、すでにアカウントを抹消されてここから ログアウトできない状態なの。
でもそれはわたしの追う彼女も同様だから、捜索する手前逃げ道の無いこの状況はむしろ都合が良かった。
けれど彼女があんた……えと、レインみたいに不正技術を持ち合わせていたとすれば、ここは最終地点にはならない?
強引にログアウトは可能だから、 答えとしては『ならない』……かな。
しかし『お友達』はまだ この“どうぶつの森”に居るのは確実だ。
どういうこと?
この“どうぶつの森”は特殊な仕様で、 いわば落とし穴のように出来ている。
不正に侵入することはまだ簡単。 不正に退場することは、オレにも不可能だろう。
この手の構造は、ログアウトするシステム・通路がどこにも空間に存在していない。
入口は使えないの?
ログイン時、ユーザーは入口から強制的にジャンプさせられて、この孤空間である“どうぶつの森”に落とされる。
あれは入口じゃない。 ゆえに別空間に繋がる出口も存在しない。
仮想ギルドツールのような、違法ツールを用いて別空間にジャンプはできないの?
ジャンプ元である、ここの座標位置は随時移動を続けているからね。 ジャンプ元の座標が曖昧だと、ここから指定先へのジャンプは不可能なんだ。
それでも強制的にログアウトは可能だと?
可能さ。 この空間の中枢部分を破壊して、空間自体を消滅させる。
随分と乱暴な方法ね。 でもそれを知って安心したわ。
ああ。 この“どうぶつの森”が存在している 以上、誰もここからログアウトはしていない。
(この空間にあの女が居る)
(わたしにとって、唯一の『お友達』……)
さて。 そろそろ、彼女の捜索を始めるわよ。
あ、それと君の名前だけど。
すっかり忘れていたわね。
クレハ……という名前はどうかな?
クレハ?
そう。 『908』でクレハ。
9月08日はオレの誕生日です。
…………
これなら君のことを オレは忘れたりしないだろ?
…………
……クレハね。 うん、いいかもしれない。 気に入ったわ。
正式には登録できないけれど、 わたしは、たった今からクレハ。
改めて。 よろしくね、レイン。
こちらこそ。 よろしく、クレハ。
それから、おめでとう。
?
今日はあなたのバースデーよ。
……ぁ
そ、そういえば今日だったか。 ……あはは、すっかり忘れてた。
(言ってる傍からこれだもの。 レインもわたしこと、そう長くは覚えて くれてそうにないわね……)
でも次からは忘れない。 9月08日はもうオレの記念日じゃなくなったから。
9月08日は、君の記念日だから。
……
あ、デレた?
デレてないっ!
いやいや、ちょっとデレたよ。
デレてないってばっ!
本当にい?
デレてないっ!
…………
………………
……………………
……くま~
……くま、くま~
く、クく、
……マ……ぁ……






