大学を卒業してから、この貧乏臭い部屋に閉じこもること数年・・・。
ようやく30歳になったぞ!
これで、今日からオレも魔法使いだ!
街に出て、オレの魔法で・・・リア充どもをこっぱみじんにしてやるぜ!
まずは、この城みてえなラブホ!
くらえッ・・・!! 全滅魔法、ミナゴロシズン!
えっ・・・?
ずどーむ!!
ぐほぁーっ!?
お、おかしい・・・何故だ?
どうしてオレの魔法が、はね返されたんだ・・・?
フフフ・・・未熟なり、若き魔法使いよ・・・。
誰だ!? 姿を見せろ!
おまえの魔法を反射したのは、このオレさ。
何故だ!
オレの新魔法を・・・あのラブホで実験中だったものでな。
新魔法だって!?
35歳になると使える魔法さ。
コン○ームに針の穴ほどの傷をつける魔法さ。
そんなものを使ったら・・・リア充どもがみんな・・・。
察しがいいな!
リア充どもを独身から強制的に卒業させる・・・そういう魔法さ!
なんておそろしい魔法だ!
若き魔法使いよ・・・おまえはまだ、魔法使いになってから日が浅いようだな。
昨日、やっと30歳になったばかりです!
なんだと・・・! 大魔法使い様にはご挨拶したのか!?
いえ・・・まだです。
よかろう。 ちとついてこい。
オレも魔法使いとしてはまだまだ未熟だが、素人同然のおまえになら教えることもできよう。
あ、ありがとうございます!
こ、ここは・・・。
大魔法使いの一人・・・大師兄が住んでおられる家だ。
大師兄?
御年50を迎えた魔法使いの称号だ。
大先輩だぞ! 失礼のないように気をつけろ。
は、はいっ!
おお。 また一人、魔法使いが増えたのか。
はい。 つい先日、やっと・・・。
まあそう堅くなるなよ。
これからも女色を絶って、清い体を保てよ。
そうすれば、年を経るごとに・・・魔力が強くなっていくからな。
たしかに・・・! この人から、すごい魔力を感じる!
次は大尊師にお会いしてみるといい。
大尊師ですって!?
清い体を保ちつつ、70歳を迎えれば妖精境に片足をつっこむ・・・。
大尊師とは、そのようなお方につけられる称号だ。
すごい! 上には上がいるんですね。
ここで会ったのも何かの縁だ。 オレが二人を案内してやろう。
ここに大尊師が・・・。
家の外だというのに・・・すごいオーラを感じるぞっ。
二人とも。 女からもらったものは、はずしておくんだぞ。
大尊師は清いお体だ。
研ぎ澄まされた魔力が、モテの気配に対する嫉妬エナジーとなって、命を奪うことすらある・・・。
なんという・・・。 これが、本物の魔法使い!
ほう・・・これはまた、若いのう。
オレの倍以上もの年月を生きた、偉大な魔法使い・・・。
見ているだけでわかる・・・! この小さな体に、いったいどれだけの魔力を秘めているんだ!?
案ずるな、若人よ。
人は自然に老いるものじゃ。
いずれはおぬしも・・・のう。
ちょっとイヤだなあ、って思い始めているオレがいる。
おぬし、迷いがあるようだな。
よかろう。 今日は特別じゃ。
人を超え、さらに魔法使いを超越した・・・神にもっとも近い、あのお方にお会いしてみるがよい。
お待ちください、大尊師様!
彼にはまだ早すぎます!
まだ・・・上がいるんだ・・・。
そ~れ、行くがよい。
ま、待って・・・!
そして、己の答えをつかむがよい・・・。
こ、ここは・・・。
よく来たな・・・人間よ。
いや。 魔法使い、そう呼ぶべきか。
あ、あなたは・・・?
女とかかわることなく、二千年あまりを過ごしてきた存在・・・。
すでに肉体は滅び、我が身は概念と成り果てた。
すげぇ! アルティメットまどかみたいだ!
人の体を持つうちは、まだ「もしかしたら、オレもいつか女とイチャイチャできるかも・・・」などと夢を見ることもあろう。
だが、真なる魔法使いともなれば、このように肉体すら必要ない。
そ、そうですか・・・。
若き魔法使いよ・・・。
戻って己の道筋・・・生きる道標を刻むがよい・・・。
う、うおおおおーっ!!
こ、ここは・・・?
大尊師の家だ。
戻った・・・のか。
よい経験をしたようだな、若き魔法使いよ。
は、はぁ・・・。
ホッホッホ・・・。 どうであったかな?
この先、己がどう生きるか・・・答えは出たかのう?
風俗に行って、魔法使い卒業します!