今日は君たちに「ストロベリー理論」というものを教えようと思う。
先生、宜しくお願いします。
君たちはまず、果実と種子については理解しているかな?
理科の話ですか?小学校で習った記憶があります。
OK。ならばここでクイズを出そう。
ここに1つのいちごがあるだろう?
みずみずしい、いちごですね。
では、いちごの種子というのは、 どの部分にあたると思う?
そんなの、そのつぶつぶに決まってます。
なるほど…。ならば、いちごの果実というのは、どの部分にあたると思う?
・・・その赤い部分でしょう?
ふむ…。
君は大いなる勘違いをしている。
本来、いちごの果実というのは、 キミがいう「つぶつぶ」の部分のことを指すのだよ。
そして種子は、その「つぶつぶ」の中に存在するのだ。
あの赤い部分は、元々めしべの付け根にある、いわゆる「座布団」的な部分が発達したものに過ぎない。
ところが動物たちは、あの赤い部分を「果実」と勘違いし、むしゃぶりつくように食する。
そして、体内に取り込まれた本来の種子は、排泄されることにより、できるだけ遠くに運んでもらうのだ。
子孫を広く、多く残すためにな。
これに転じて、「ストロベリー理論」というのは、
見かけに騙されて、本質を見抜けない愚か者らがはびこる、この現代社会を皮肉った理論だと言える。
敵は本能寺にあり、ということわざにもよく似ているが、
真の目的は別のところにあり、愚か者はまんまと偽物(ダミー)を掴まされていることも知らずに、
大喜びするという話だ。
つまり、ひとつ間違えれば、ますます世の人間不信の風潮を加速させる危険な理論とも言えるだろう。
また、一方で、世を賢く生きる処世術とも捉えることもできると謳う専門家もいる。
例えば、キミたちはふと理由もなく、エロ本が恋しくなる時があるだろう。
エロ本は欲しいが、他人の目が気になる…。
特に、母親に見つかったらとなれば、それはもう修羅場…。
学校が終わって部屋に戻ったら、机の上にキチンと重ねて置かれているエロ本の山を見たときの、あの絶望感…
そんな辛い思いを抱かぬように、 ここに辱めを受けることのない、
正しいエロ本の買い方を1つ提示しよう。
エロ本を購入する際に、一緒にスケッチブックと筆記具を購入するのだ。
羽ぼうきもあれば、尚よいだろう。
すると、どうだろうか? このラインナップを見た店員も母親も、
「この人は単にモデルのポーズや表情を参考に芸術活動に勤しむのであって、
決してやましい理由などで買ったものではない」と、錯覚させることができる。
芸術家は変態だ、なんてよく言われているが、あながち間違いではないのかもしれないな。
‥‥‥。
…で、先生は何が言いたいんですか?
…いいか? この課外授業もそうだが、 先生がキミたち生徒諸君のために、
わざわざ学校に来てまで教鞭を取っているということは、
単に自らの奉仕精神に則って、進んで善行を積んでいると周囲にアピールし、高い評価を得ると同時に、
己の聖職意欲を満たしたいがためではないということを、まず分かってほしい。
本当にただそれだけの理由ならば、家庭教師をしたほうが割もいい。
それでも、あえて私が学校の教師でいる理由、それは───、
私が制服フェチだから、ただそれだけに帰納する。
よく考えてみろ。 いい大人が制服の女子を見てニヤニヤしてるなんて、
明らかに不審者極まりないだろう?
だから、教師という大義名分の下で、堂々と制服の女子を眺めることができる、これこそ神職だと思わないかね?
長い人生の中において、制服の袖を通す期間など、悲しきかな、ほんとにごく短い。
私はそんな刹那に一際輝く光を放つ少女たちの姿をこの目に焼き付けたい、立会いたいと切に願っているのだ。
・・・・・・。
先生の言いたいことは分かりました。
実は私も、この授業に参加している理由も、ただ単位が欲しいからやむ無く参加しているわけではないのですよ。
ほう・・・、興味深いね。
教師という、教育カーストの最底辺に位置する悲しき職を担うあなたたちを、
文字通り、反面教師として、未成年という安全な場所から優越感を味わいたいがために、
ただそれだけの理由で、わざわざ学校に足繁く通っているのですよ?
特に・・・、ちっぽけなプライドと気色の悪い倒錯性癖だけを頼りに人生のぎりぎりを生きている、
あなたのような教師を、観察することこそ、私のルーチンワークなのです。
その点では、私は先生のことは好きですよ?
・・・・・・。
フッ・・・、どうやらお互い様・・・・、
いや・・・、キミのほうが一枚上手なようだ。
私は、まんまとピエロを演じさせられていたというわけか。
2人は同時に、笑い声をあげた。
・・・・・・
なんか、この教室楽しそうだなァ。
ホント。次からは私もサトウ先生の授業真面目に聞こうっと。
サトウ先生、最近良いですな。 生徒からの信頼も厚いし、 教頭としても、鼻高々ですよ。
ガララララ
先生ーっ、私も授業聞きたいですーっ!
おや・・・、また愚か者が1人・・・。