俺が事故で死んでから途方もなく長い時間が過ぎた。
そして、輪廻転生の時を経て、俺は再びこの世に生を宿した・・・。
普通、生き物は前世の記憶なんて覚えていないものだ。
狭い産道の中をくぐり抜けてくる最中に、頭に強いショックを受けて記憶が消し飛ぶんだとか。
しかし、俺は何故か覚えている。
しっかりと覚えているぞ!
忘れない・・・、俺を撥ねたあの白いバンのナンバーを!!
そして、そのバンに乗っていた運転手の顔も!!
その助手席に乗っていた、俺好みなギャルのねーちゃんも!!
今でも耳から離れることのない、カーステレオから垂れ流しされた、AなんとかBの曲も!!
・・・・・・。
だが、俺は再びこの世に戻ってきた。
いや、生まれ変わったと言ったほうがいいだろう。
いつまでも過去のことにくよくよするなんて、女々しいだけだ。
忘れよう。そして、今を楽しく生きるのだ。
・・・とはいえ───、
・・・何故に、お地蔵様なのだ?
そう、俺はどういった訳か、今回はお地蔵様に転生したらしい。
ちなみに、前世はカエルでした。
雨の日の夜、田んぼ道で車に轢かれ、ぷちっとカワイイ音を立てて潰されました。
何でよりによって立像なんだよ!
奈良の大仏とか鎌倉のそれとか、あぐらかいてるだけで皆から崇められるっていうのに!?
理不尽すぎる!!
特に、奈良のお前!屋根付きの家だけに留まらずおまけに豪勢なお庭付きってどうゆう了見してんだゴルァ!
根性足りてねえんじゃねぇか!?
雨ニモマケズ風ニモマケズ精神の俺たちを見習え!
たまに、お菓子とかお供えしてくれる人とかいるけど、
食えねえから!身体が石みたいに硬直してて指先1つ動かせねえから!
ヨダレだらだらだよ!お預けされてる犬みたいな気分だよ!その証拠にオシャレなヨダレ掛けしてるだろ?
そりゃ石だもん!仕方ないけどさぁ!
どうせなら、最後まで面倒みて欲しいよね!
はい、あーん、とか、食べさせてくれればいいのだけれども・・・。
てか、このおでこのちょっぽ、なんなんだよ・・・?
ボタンじゃねーんだよ!押してんじゃねーよガキが!
何も起動しねーよ!いや、むしろ俺の人生を再起動してくれ!
てかまじだりぃ、座りてぇ・・・。
(うるせぇよ、このオシャベリ石頭が・・・)
(沈黙は金っていうだろ・・・?)
・・・!!
(こいつ、直接脳内に・・・!?)
なるほど、喋らずとも意思疎通ができるってか!?「石」だけに!よくできてるな!
・・・・・・。
(そんなに喋り足りないんだったら、しゃべ●り007にでも出演して上●にイジってもらえよ)
いや、そうは言いますけどね・・・、
俺なんか今時の普遍なお地蔵様風情が、上●にイジっていただけるようなとびっきりのネタだなんて・・・。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・。
実は双子なんですよ!とか?
「明らかに喋るお地蔵様に食いつくだろうが普通ならば!」
「晋也の目は節穴かァ!!」
・・・・・・。
「実は周りの人から、お前頭固いよなーって言われちゃうんですぅ~」
「私はそんなことないよーっていっつも言ってるんですけど~」
「上●さんはどう思いますぅ~?」
「ん~、でもキミ現に石頭だしね?」
「てか、全身石で出来ちゃってるもんねぇ?」
「それならなんだ?ダビデ像とかモアイ像とか、キミの親戚かなんかか?」
「ダビデくんが中学のクラスメイトの人気者で、モアイさんは近所の優しいお兄さんでしたぁ~」
「んなわけあるか!グハハハハ!」
・・・・・・。
なにちゃっかり俺がしゃべ●り出演した際に想定される流れやっちゃってくれてるわけ!?
てか、お前も大概なおしゃべり野郎じゃねぇか!
なにが沈黙は金だよ!?
お前なんか、ただ単に野良犬とかに金色のしょんべん引っ掛けられてるだけじゃねーか!!
・・・それの何が悪い!!
・・・!?
俺たちが受け止めてやらねーで、誰があいつらの鬱憤を受け止めんだよ・・・っ!?
これ以上、あいつらの居場所を、道しるべを・・・奪ってやらないでくれよ!!
お願いだから・・・ッ!!
・・・・・・。
・・・なんの話だよっ!?