(……おかしい、どう考えてもおかしいぞこれは)
(学校に行けなくなった俺はこのまま家でひっそりと過ごすつもりだった……)
(だが……)
(ちゃんと食材はあるじゃないか、食事はちゃんと取ってるみたいで良かった……)
(物好きな幼馴染が我が家と言わんばかりに意気揚々と調理をしている……忘れてはいけないのはここは俺の家だ)
ん?どうしたんだい?お腹空いたんだったらもうちょっと待ってて、後ちょっとで完成するからさ。
うん、おかしいわこれ。どう考えてもおかしい。
おかしいって何がさ。
ここは一応俺の家だぞ?何で調理器具とか置いてある場所を知っているんだ?
だって私達幼馴染だよ?小さい頃から君の家に入り浸っていたんだから覚えてるさ。
お前の記憶力はどうなってるんだ……。
いやこれくらいで感心されても……とにかく出来たら運ぶからさきに席についててよ。
今日のご飯は肉じゃがにしたからさ。
あれ?お前肉じゃが作れたっけ?
作れるよ、よほど難しい料理じゃなければ一応は。
(何だこの漂うハイスペック感は……)
(……正直に言おう)
……旨い!旨すぎる!!
いい食べっぷりだね!遠慮せずどんどん食べな!!
いや遠慮も何もこれ俺の家の食材だからな?
そういう所だけは素に戻るんだよなー……。
それにしても……いつこんなに作れる様になったんだ?
そりゃあ家で練習してるからね……私は毎日進化するのだよ!!
進化していない箇所とかはあるけどな。
うっさい!!まだ成長し切っていないだけだよ!! これから成長するんだからな!見てろ!!
お帰りはあちらになります。
それ遠回しに拒否してない!? 私の成長物語を見ないという意思でいいんだね!?
いや、もう時間的に帰った方がいいと思ってな。
何言ってんの、私が言った事をもう忘れたのかい?
……おい、まさか『ずっと側に居る』って……。
うん、君の思ってるとおりだよ。
絶対ダメ!断固拒否する!!
拒否なんてさせないよ!! 君をこのままにしておけないしね!!
あのな……俺みたいな屑の為にそんなにしてもらわなくても……。
止めてよ、そういう言い方は私好きじゃない。
いや事実だし……、俺なんかに構ってないで自分の時間をもっと有意義に使えよ。
いやこれが私の時間だし、君と過ごせない時間なんていらないよ。
あのな……お前のそれはどこから来てるんだ?俺への同情心?幼馴染としての責任?
……そんな気持ちで俺の世話を焼くなんて言うんだったら止めてくれ……俺の情けなさが嫌と言うほど思い知らされる。
うん、今の君は情けないね。
うぐ……。
何かあれば弱音を吐いて、事あるごとに私を突き放そうとして……隙あれば死のうとして。
君に言われる前に知ってるんだよ、どれだけ情けないかなんて……昔から知ってる。
……そこまで分かってるならもういいだろう……。
でも、情けなくていいんじゃない?
……はい?
別に君が情けない奴だろうが何だろうがそれくらいじゃ私は変わらないよ。
……それに同情心だとか責任とかそんなので君と一緒に居るわけじゃないよ、私の事馬鹿にしてるのか?
そんなつもりじゃないんだけどな……。
だったら「俺なんか」とか「同情」とかそんな事言わないでほしい。
……それ、聞くほうが辛いんだよ……?
う……す、すまん……。
じゃあお詫びに私と一緒に添い寝をしてもらおうかな。
……いや何言ってんだお前、それは無しだろ。
いや有りでしょ。
ねーよ!!
……結局押し切られて今はベッドの中……隣にはもちろん……。
何ぶつぶつ言ってんのさ。
……うん、今日は本当におかしいわ。
いやいやおかしくなんてないよ、ちゃんと宣言通りにしてるだけだし。
……。