それは完結した物語だった。
私が姉に騙され、文芸部の部長に頼まれたのは、編集および文章の制作であった。
それだけであれば、既存の文芸部員だけで事足りるだろう。
しかし、私は部長から渡されたのは一冊の本だった。
”少女の角笛”
その本を渡し、部長は言った。
実はね、この本の続きを書いて欲しいの。
は?・・・え?
いや、予想外とかそんなんじゃなく、物語を作る、と思っていたのだが、これは代筆
――いわば、ゴーストライター的なやつだったのです。
んまぁ、読んでくれたまえよ。
そう言われ、私は部長から本を受け取り、ページをめくりました。
製作者は10年前の卒業生で、その人は才に恵まれていた才女であったらしい。
そんな彼女が卒業作品として、この本を書いた。
内容は、こうだ。
世界は4つの季節で区切られていた。主人公の女の子は、春の季節の生まれだった。
女の子は明るく誰からも信頼されるような、ハキハキとした性格の子でした。
しかし、女の子には少し年が離れた弟がおり、その弟は冬の季節が支配する地域でしか手に入らない薬草を必要とする難病をかかえていました。
女の子は甲斐甲斐しく弟の世話をやいていたのですが、弟は日に日に悪くなるばかり、女の子は何とかして治してやろうと、
得意の歌を唄いながら、酒場で働きました。
そして、弟はベットに赤い血を吐き、ベットを赤く染め上げました。
女の子は弟の命が残り少ないのを確信した。
女の子は考えた。
弟はいったい何のために産まれてきたのか、ただ苦しむだけのために弟はこの世に生を受けたのか、
暗く小さな部屋で死ぬのをだただ待つ悲しき生だったのか、女の子は考えた。
そうして、女の子はそれを否定し弟の病を治す薬草が生えた山へと向かった。
冬の山には魔女が住むと聞く、その魔女を訪ね弟を治す魔法を教えてもらう、女の子は反対する両親を押しきり、冬の山へと向かった。
冬の季節へとやって来た少女は絶望した。草木は枯れ、水は氷、風は凍てつく寒さだった。
人の住める地ではない、女の子はそう思いながらも、魔女が住むと言う山へと向かった。
しかし、冬の大地は春の豊かな大地とは違い、枯渇した、滅びてしまったかのような大地だった。
女の子はそれでも歩み続け、
狼を操る部族の山を越え、
人語を話す猿がいる山を越え、
おぞましい魔物が住む山を越え、
女の子は魔女が住むと言う山へとたどり着いた。
魔女は絵本で見るかの如く、醜い老婆でした。
女の子は魔女に、弟が治る薬を調合してくれ、と頼んだ。魔女は女の子の左目を材料に、女の子の記憶を対価に要求した。
自らの手で左目をくりぬき、女の子は魔女に記憶と共に捧げた。
魔女は女の子の潔さと、少女の悲鳴に満足し、薬は弟に直に届けてやるし、お前も故郷に帰してやろう、と言いました。
しかし、記憶がない女の子は拒否しました。
魔女は、仕方ない、と言い薬を渡しました。
記憶がない女の子は、いきなり薬を渡されどうすればいいのか?と、魔女に聞く。
魔女は、山のふもとの街から出る船に乗り、秋の大陸へ渡りなさい、と言うが女の子には手持ちがなかった。
魔女はまた、仕方ない、と言うと、ふもとの街へ女の子を連れていき、女の子を売春宿へ売り飛ばしていった。
魔女は、しっかり働くんだよ、と言い残して、売春宿の女将からお金をもらい去っていった。
女の子はその宿で働いた。わけもわからず、ただそこで働いた。
幾年と月日を重ね、女の子は秋の大陸へ行ける十分なお金を稼いだ。
女の子は今だに記憶が戻らないまま いつしか魔女に言われた通りに秋の大陸へと渡る船に乗った。
そうして、女の子は記憶の無いままに、秋の大陸へと渡った。
そこで、この話は終わった。
それが、この【少女の角笛】と言うお話の意味が不明な終わりでした。
1/1 完