翌日
(はぁ、毎朝毎朝、決まった時間に登校しなきゃならないなんて……ここ、義務教育の辛いとこね。)
(ま、私、高校生だけど)
(そう言えば明日あたり、例の小説の締め切りかぁ)
(書く内容は思い付いてるけど……)
(やっぱり、記憶喪失をした女の子を無理やり旅に出させる案は失敗だったかな)
私は、あの作品を読み返して思うのだ。
やはり、あの作品はあれで完結された物語なのだ。
結局、女の子は自らの目的も果たし、きっと、弟の方も魔女から薬をもらい、病気は治ってハッピーエンド、だ。
その結末は、女の子は弟に会えはしないが、それでも一応のハッピーエンドたのだ。
だから、ここから続けるのは、書き続ける、と言うよりは、テコ入れレベルのものになる。しかも、かなりの原作無視した形で。
私は、原作無視はしかたなしで文芸部の部長さんへ、この前の原稿を渡した。
結果的には合格らしかったが、私は見事に記憶喪失して女の子、を、記憶が戻りつつある女の子へと変えた。
しかし、この原作無視にたいし部長さんは合格をくれた。
なんと言うか、本当になにが基準なのか、分からない依頼になってきた。
あー、正直なげだしてぇー
どーかしたんっすか?さーちゃん!
あら、おはよ。梗子。
はい、おはようです。さーちゃん!
このいかにも元気そのものな女の子は、久遠寺 梗子(くおんじ きょうこ)。私の親友である。
中学一年生で席が隣になってから、なにかと意気投合が多く、同じ高校まで進む中であったりする子だ。
でも、どうしたんっすか?なげだしてぇー!って呟いてたんっすけど?
もしかして、例のゴーストライダー、って奴に悩んでるんっすか?
ゴーストライダーではなく、ゴーストライターね。梗子。
ややー!ミスったッス、ミスったッス!
まったく・・・
でも、なんだか、今日は特別機嫌がいいわね、梗子。
あ!やっぱり、さーちゃん分かっちゃう感じッスカ!!
(ま、梗子は感情とか隠すの苦手だから、まるわかりなんだけどね)
実はッスよ!
ウチの兄貴がついに不登校児からの脱出をしたんッスよ!
え?梗子のお兄ちゃんが?
そうッス!そうッス!
ついに、部屋から出て学校行ってくれる気になったらしんッスよ!
といっても、保健室登校なんっすけどね
そっか、よかったね。梗子!
梗子の兄は、梗子のホントの兄ではなく義理の兄だ。
小学六年生の時に梗子の父親が再婚した際に出来た兄だ。
その兄は中学三年生の時にイジメで学校に行かなくなり、高校へは元々の頭の良さで特別枠で地元の有名校へ合格した。
しかし、その高校もまったく行かず、出席日数とか成績が危ないとかで、梗子達が一生懸命に説得したらしい。
そして、今日、なんとか梗子の兄は登校を決意したとか。
梗子は優しい子だ。血が繋がってはない、と言う兄でもこうして素直に喜べる。私にないところが、私は好きだった。
おや、なんだか楽しそうな話をしているな。
お!こーちゃん!
あら、おはよ。来和。
あぁ、おはよう。咲夜、梗子。
彼女は、後藤 来和(ごとう こより)。
簡単に言えば、文武両道、容姿端麗、あと、金持ち性格良し、の最強少女。
あと、生徒会長なら完璧だが、残念ながら、このクラスの委員長だ。
で、なんなのだ。
あ、そうそう、あのね、梗子のお兄ちゃんが―――
カクカクジカ(略)
ほぉ!それはよかったな!梗子!
へへぇ~、なんだか自分のことのように嬉しいッス!
とゆうことは、今朝方私が見たのは、気のせいだったかな?
?何がっすか?
いや、この辺りの朝方、駅で梗子のお兄さんが、通う学校とは違う方へ行く電車に乗っていた気がしたのだがーーー
私の気のせいだーーー
な、と来和が言い切ろうとした時、ふと、梗子の顔を見ると、そこには、目のハイライトを失った梗子がいた。
ちょ・・・ちょっと待て梗子・・。わ、私の気のせいという可能性を忘れるなよ?な?な?
はっはー、そうっすよ!そうっすよね!
と梗子は言っているが、目が笑っていない。
(めっさ怖いわ・・・)
(目が・・・死んどる・・・)
そうして、そうこうしているウチにチャイムがなり、気怠い一時限目が始まった。
あ!席座るッスよ!二人とも!
その日、梗子の周りには暗黒空間が漂い続けていた。