わたくしは、この格好を見て頂けるとおり、メイドです。
お仕えしていたお屋敷からのリストラ、メイド切りにあって、ただいまホームレスの身です。
なんとか貯金を切り崩してやりくりしてきましたが、もう余裕がなく、今日の夕ご飯すら買うお金がありません。
はあ、どうしたものでしょうか・・・。
(ぐうう)
おなか、空いたなあ・・・。
にゃーん。
ねこさん。
(・・・ねこって美味しいのかなあ?)
い、いけません! 空腹で良からぬことを考えてしまいました。
にゃー。(ぽとり)
ん? これは、アジの干物?
これをわたくしにくださるのですか?
にゃー。(こくこく)
あ、ありがとうございますぅ~!
もぐもぐ。 ああ、なんて美味しいのでしょう! 空腹が満たされてゆきます。
わたくしめに食べ物を恵んでくださるなんて。あなた様は、わたくしのご主人様です!
わたくしはあなた様にお仕えいたします!
にゃー、にゃー。
え? ついてこいとおっしゃる?
にゃー、にゃー。(こくこく)
承知しました。どこまでもお共します!
にゃー。
あっ! もう、どこ行ってたのよ! ニャー太! 心配したんだから!!
にゃー。
おじゃまします。
ど、どなた!?
こちらのねこ様のメイドです。
はぁ!?
ちょ、ちょっとニャー太、なに変なの連れてきたのよ!
ご迷惑でしょうか?
いや、迷惑というか、困るんですけど。
ご安心ください。わたくしはニャー太様にお仕えするだけのメイドですので。
は、はあ。
にゃー。
はい、ニャー太様。 「メシを持ってこい」とおっしゃっています。
あ、はいはい。もう、まったく。
にゃーにゃー。
「トイレの砂を交換しろ。あと爪研ぎも新しいのにしろ」とのご命令です。
ちょ、あんたがやりなさいよ! あんたメイドさんなんでしょ!!
はい、確かにわたくしはニャー太様専属メイドですが、ご指示は全てあなた様にやってもらえ、とのことです。
ニャ、ニャー太! お前いつからそんなに偉くなったのよ!
にゃーにゃー!
「オレ様にそんな口の聞き方をするのかこの小娘!」 と、おっしゃっています。
ぺ、ペットの分際でいい気になって!
にゃーにゃー!
「早くやれ! 飼い主だからっていばってんじゃねーぞ!」と、おっしゃられています。
にゃにゃにゃ!
「言うこときかねえと、このメイドさんの鉄の拳(こぶし)が唸るぞ!!」と、おっしゃっています。
ちなみにわたくし、空手3段を持っております。
ぐぐぐ。
にゃにゃにゃー。
「わかったんなら、四つん這いになってニャンと鳴け小娘」と、おっしゃっています。
な、なんだとおっ!!
く、くそお! 覚えてなさいよ! ニャー太!!