それは唐突に起きた。
んぉ……ふぁ……朝か……。
……?いつもだったら紗希が挨拶してくるはずだが……居ないな。
……ご、御主人……様……。
紗希!?どうした!! 顔が真っ赤だぞ!?
だい……じょうぶです……。 お、おはよう……ござ……。
ぶっ倒れた!? おい紗希!しっかりしろ!!
……。
……メイド長。
はい、何でしょう。
……紗希は……紗希はどうなった……?
それが……。
うおおおおおおおぉぉぉぉん!!!
ご、御主人様!? どうなされました!?
だって……だって紗希が……紗希が……死んじまったんだぞおおおおおぉぉぉぉ!! これが泣かずにいられるかあああああぁぁぁ!!!!
ウルセウス!!
エンッ!!
痛い!痛いぞ息子よ!! 単なるお茶目なジョークじゃないか!! お前はそこまで心が狭かったのか!?
笑えねぇジョークなんて言うな!! 本気で言っていたら最悪だぞ!!
フハハハハハ!! どんなにくだらない物でも本気でやるのが真の男というものだ!! なあメイド長!!
私には分かりません、御主人。
メイド長おおおおおおぉぉぉ!!!
相変わらずだなこの親父は……。
……で、紗希の容態はどうだ?
御心配なく、風邪ですわ。 今日はゆっくり休んでもらいましょう。
ああ、そうしてくれ。 ……じゃ、紗希を起こさないように親父を引きずってるわ。
……。
ごめんなさい紗希……貴女の体調に気付けなくて……。
紗希ちゃあああああぁぁん!!!
こら歩夢!! 紗希が起きちゃうでしょ!静かにしなさい!!
ご、ごめんなさいメイド長……でも紗希ちゃんが心配で……。
紗希なら大丈夫よ、一日安静していればすぐに治るわ。
あぁ……よかった……。
……さて、紗希が目を覚ました時の為に色々と準備するわよ。 お粥とか作ってあげましょう。
はーい。 私もお手伝いしますー。
……あ、でも紗希ちゃんの看病が……。
その役目は俺が引き受けよう。
ご、御主人様!? いつの間に……というか御主人自らが看病って……。
これも主人の務めだ、いつも俺の為に尽くしてもらってるんだからな。 日頃の感謝も込めて俺が看病しよう。
ならお坊ちゃま、紗希の看病をよろしくお願いします。 私達はお粥を持ってきますので。
任しておけ。
……う……暑い……。
お、目が覚めたか紗希。
ご……御主人様……!? 何故私の部屋に……。
おっと、無理して起き上がらなくていい。 風邪だってさ、今日はゆっくり休め。
か……ぜ……? い、いけません御主人……風邪が……うつっちゃう……。
大丈夫だよ、たまには俺にも恩返しをさせてくれ。 いつも頑張っている紗希にな。
あ……。
今日は仕事や俺の世話をしなくていい。 ……早く治って、元気な紗希を見せてくれ。
……はい……御主人様……。
……ムムム……。
……ど、どうしました旦那様。
うおおおおおおおぉぉぉぉん!! 不安だ!!不安でしょうがないんだ!! 紗希がこのまま治らなかったらどうしよう!!
い、いやただの風邪ですから大丈夫ですよ!!すぐに治りますって!!
バッカモーン!!
風邪は万病の元!! 気を抜いた物から下手したら死んでいくのだぞ!! 風邪をなめるんじゃぁない!!
す、すみませんでしたー!!
うおおおおおおおぉぉぉぉん!! 死ぬな!死ぬな紗希!! お前が死んだら俺はどうすればいいんだああああぁぁ!!
メイド長おおおおおおぉぉぉ!!
(うわーん!!私じゃ旦那様の相手なんて無理だよー!助けてメイド長!御主人様!!)
そして……。
……ふぁ……朝か……。
おはようございます、御主人様。
おはよう紗希。 もう風邪は大丈夫なのか?
はい!もう大丈夫です!!
そうか、じゃあ今日からまたよろしく頼むぞ紗希。
はい!!