お金がありません。
そんな清々しい表情で言われても困るわよ。
お金がありません!
威張ってもお金は出てこないわよ。
……。
…………。
……え? あぁ質問待ちってことね。 めんどくさいなぁ。
で、どうしてお金がないのよ。
よくぞ聞いてくれました! まず、わたしの現在の金銭的困窮具合は、今日のわたしのお昼ご飯を見たあなたなら分かるはずです!
チーズ鱈だったわね。ネタか何かと思って無視していたけれど。
ネタじゃないよ! お金がなさすぎて家から適当に持ってきた食料がチーズ鱈だったんだよ!
適当すぎるわよ。明らかな選択ミスでしょうに。
うぅ……それもこれも全てはちゃぶ台の上にチーズ鱈が置いてあったのがいけないよ……。
もうチーズ鱈はいいよ! 話がよく分からないことになってるよ!
……だから、どうしてお金がないのよ。
あぁうん。えっと、ウチね、お小遣い制じゃなくて、必要な時にお母さんからお金をもらう仕組みなんだ。
んで、迷惑かけたくないから極力おねだりはしないようにしてるの。
そう。なかなか親想いなのね。 でも、まさに今がその”必要な時”ってやつじゃないのかしら。
それに迷惑をかけたくないって言ってるけど、端から見たらあなたのその行動は――
「聞きました? 奥さん、あの家は娘に学校の食費を渡さず、その代わり渡すのはチーズ鱈だけなんですって!」
……っていう妙な噂が広まっちゃうかもしれないわよ。お母さんからしたら逆に迷惑なんじゃないかしら。
なんと……言われてみれば確かに……! 目からタラコってこのことを言うんだね!
言わないわよ。しかも全然ウマくないし。
じゃあ今度からお弁当でも作ってもらおうかなあ。あ、自分で作ってみるのもいいかも。
いいんじゃないかしら。お金はかからないし世間の目を気にする必要もないし。
よーし! じゃあ明日お弁当作ってくるよ! ついでにあなたの分も作ってこようか?
え? 私の?
うん! 一人分も二人分もそんなに変わんないしさ!
そう……じゃあお願いしようかしら。
おかずにチーズ鱈使ったら怒るわよ。
……。
!!!
やっだなぁもう……そ、そんなもの使うわけがないでしょう!
じゃあ何入れるのよ。
チ……チーズ……ケーキ……。
もう一人で食えよ!!