はいもしもし、どうしたの?
宿題? ああそういえばあったわねそんなもの。 私はその日のうちに終わらせたわよ。
……まあ、あなたのことだから見せて欲しいとか思ってるんでしょう。
分かったわよ! 電話越しに嗚咽漏らされても困るから! あなたの涙と鼻水で私の携帯が汚くなったみたいじゃない!
今のは言いすぎたわね。 ……しまった、余計に泣かせてしまった。
私が悪かったからもう泣き止みなさいよ。え? ……なんで宿題見せてあげる側の私があなたにソフトクリーム奢らなきゃいけないのよ。
そうやってまた泣くんだから! 泣けば済むと思ったら大間違……分かったから! ソフトクリームね! 奢るから!
全く……そんな泣き虫キャラだったかしら……。 で、どこで待ち合わせるの?
……どこよそこ。
……ああ沖縄。分かったわ。じゃあ一時間後に羽田に集合ね。
……って何言ってるのよ!!! そんなことばっかり言ってるともう見せないわよ!?
……あそこの喫茶店ね。はいはい、あなたと話してると本当に疲れるわね……。
それじゃあ10分後に。 え? あ……は、ハイサーイ……。
……。
……やっと終わった。 どうしてあの子にだけはこうも振り回されるのかしら……。
まあ暇してたし、ちょうど良かったと言えば良かったわね。
いやーその節はどうもお世話になりました!
どの節よ。 しかし、あなたにしては時間通りに来たのね。
そりゃ来るよ! 今日あなたに会うか会わないかで私の人生は大きく変わるよ! これがいわゆる岐路ってやつだよ!
さぁ、というわけで…… ソフトクリーム買って下さい!
……ま、まぁそういう話だったしね。先に食べましょうか。
もちろんあのお店のソフトクリームだよ! 濃厚だよねあそこ!
分かったわよ、んもぅ……。
んん~ちべたいっ! いやぁここのソフトクリームは本当に格別だよね!
そうね、それは素直に思うわ。
あー食べた食べた! 今日は本当にごちそうさまだよ!
約束したしね。すごく、物凄く不本意だけど。
それじゃあまた明日! いつもの場所で待ってるから一緒に学校行こうね!
え、あぁうん。じゃあね。
……。
ちょっとあなた! 肝心なこと忘れてるわよ!!
な、なになに!? びっくりしたぁー……。 肝心なこと……?
……。
あ!
私としたことが……。 なんたる失態を……。
あなたらしいと言えばらしいけどね。
そうだよね、これじゃなんのために集まったのか分かんないよね。
と、いうわけで! ソフトクリームを買って下さい!
おばあさん! ソフトクリームはもう食べましたよ!?
お、おばさんならまだしもおばあさんだなんて!
そこじゃないでしょ! 宿題見せてって呼んだのあなたでしょう!
しかもあなた、よく見たら手ぶらじゃない。これじゃソフトクリームが食べたかっただけのソフトクリーマーよ。
そ、ソフトクリーマー!?
……悪い気はしないかな。
かっこよくないから! ただの食いしん坊だから!
ほら、勉強道具持ってきてないなら貸すから、明日絶対持ってきてよね。
後光が……あなたに後光が差している!
こんな優しい友達を持って私は幸せです……。
なんだかいいように使われているだけな気がするんだけど……。
何を仰いますか! あなたという存在があって私がいるのであり――
あなたという存在があって私はソフトクリームを食べていけるのです!
ソフトクリーマーじゃねえか!!!