俺はハーレムを夢見ていた。
この世の冴えない男の子はすべからく、ハーレムになるのだと思っていた。あのアニメの主人公のように。
ハーレムになるのを待ち続け、待ち続け、待ち続け…。
気づけば、俺は28になっていた。
ずるずると留年と休学を繰り返して、大学院を卒業後、就職したが、職場の雰囲気やら人間関係に馴染めず自主退職。
俺にハーレムは訪れなかった。
俺の手に残ったのは、大学院で学んだロボ工学の知識と製作技術…。
俺のことを好きでいてくれる女の子が欲しかった…。
だから、『アイツ』を造った。
リアルアンドロイド『幼馴染・翠』。
設定は今流行りの、いとこ兼幼なじみ。
ロボ工学で学んだ全てをこいつに注ぎ込んだ。声・動作・肉感・人工知能どれを取っても人間に見間違うくらいのクオリティ。
でも、『アイツ』は失敗作だった。
俺のことが好きで好きで堪らなくなるよう計算して作ったのにも関わらず、
アイツは俺の事を好きにならない。
俺から距離を置いたり、悪口を言ったり、暴力を振るったり…。バグが原因か何かだろうか?
費やした時間が時間だけに、今更分解して作り直すのはもう面倒だ。
だから、俺は別のアンドロイドを造った。
いいね~。ゆかりちゃ~ん。
おっ、それ最高だね! もう一枚いっとこうか!
はい、撮影終了で~す!
あっ、マスター!
仕事の方はどうだい?
お陰様でッ。固定ファンがついてきて良い調子ですよ~。
それもこれも、マスターが私を美少女に造ってくれたお陰ッス。
彼女はリアルアンドロイド『財布女・紫(ゆかり)』。
俺に代わって仕事をし、金を稼いできてくれるロボだ。酷いネーミングだが許してくれ。
紫は野良グラドルで、ネットで彼女のページを見た顧客から注文を受け、こうやって撮影され、その料金をいただいているのだ。
どれくらい稼いでるのかは言えないが、翠と紫の製作の為に作ったどでかい借金を1年でキレイさっぱり返済できた程だ。
それはそうと、マスター。今日は何の日か知っていますか?
えっと…、何の日だっけ?
そんなとぼけなくてもいいですよ!
すると、紫はバッグからチョコの入った袋を取り出す。
どうせマスターはモテないんだから、私が作ってあげましたよ。
モテないは余計だけど、ありがとう!
あの…、マスター。
何だい?
やっぱり…、マスターはアンドロイドである小生よりも、人間の女から貰うチョコの方が嬉しいですか?
紫…。
俺は、ワシャワシャと紫の頭を撫でる。
あうっ。
そんな訳ないだろ。俺は紫からチョコを貰えて、メチャ嬉しいぞ。
何か…、マスターにこうやって触られてると発熱してしまいます…。
お前ぐらいだよ。俺に触られてそうなるアンドロイドは。
なっ! こんな優しいマスターに頭触られても何の異常も発生しないアンドロイドがいるのですかっ!?
いるんだよなぁ、これが。
翠のことを話そうとしたが、これ以上怒りで発熱されたら故障するかもしれないので、控えることにした。
それはそうと、マスター。今日は例の学校が終わった後、予定とかあります?
いや、特に何もないからそのまま直帰するけど。
そ、そっかぁ。何も予定ないんですねぇ…。
予定ないんですね…。
予定ないんだぁ…。
?
じゃあ、今晩は私の部屋に来ませんか?
え?
紫から夜のお誘いを受けた海斗。果たして海斗は紫の部屋へ行くのか? はたまた翠の待つ家へと帰るのか?
それともまた別の女の元へ向かうのか? その女はアンドロイド? 人間?
続きは、ダメリンゴさんにお任せします。