Ep.01 几帳面な彼女
小学校時代。
ふ~、すっきりしたンダな。
あーッ、熊猫ちゃん、またズボンでお手て拭いてるー。
ハンカチ忘れたの?
そうだよ。
いけないんだー。ハンカチ、はなかみは忘れないって、先生言ってたのにー。
忘れたモンはしょうがないンダな。
ズボンがダメなら、ユキコちゃんの服で拭いちゃうンダな。
やめてよーぉ。もうしょうがないなぁー。
ほら、私の貸してあげる。
サンキュー。(ゴシゴシ)
ん・・・、これ、ワンコの柄なンダな。
ユキコちゃんは、犬が好きなの?
うん、だいすき!
ボクん家、犬飼ってるんだけど、帰りに見に来ない?
え、いいの?うん、行く行く!
それじゃ、また放課後なンダな!
ここがボクん家なンダな。
ねぇ、熊猫ちゃんのワンちゃんはどこ?
ちょっと待ってて、今連れてくるンダな。
わん、わん!
うわぁ、おっき~ぃ!
わん、わん!(とたたたっ)
きゃっ!
・・・ユキコちゃん!
ユキコちゃんは、ボクの犬にじゃれつかれた反動で、その場でお尻を打った。
ユキコちゃんは突然のことに驚いて、泣いてしまった。
そして、ボクもその後すぐ、勝手に犬の首輪を外したのが親にバレて、怒られた。ボクも泣いた。
夕澄みの中、2人でわんわん泣いた。
あんな怖いことがあったから、ユキコちゃんはもうきっとボクの家に遊びに来ないと思っていたけど、
次の日、「また犬見に行ってもいい?」とユキコちゃんのほうから声を掛けてくれた。
「お尻だいじょうぶ?」って聞いたら、「ちょっと青あざになっちゃった」って言ったから、
思わず吹き出してしまったら、ユキコちゃんに引っぱたかれた。
それから、放課後のボクらは、毎日のようにボクの家の犬と遊ぶようになった。
たまにユキコちゃんのお尻を見ていると、そのたびユキコちゃんの顔が赤く染まっているように見えた。
それが恥ずかしかったからなのか、夕陽のせいなのかはわからなかったけど。
これが、ボクとユキコちゃんが仲良くなった馴れ初めの出来事。
そして、まだ本当の痛みも苦しみも、何にも知らない子供の頃のお話。
続く