【吉永】 ごめんねー。 私これで帰るわ。
【吉永】 じゃあねー。
【山田】 ハァ・・・。
【山田】 またフラレちゃった・・・。
あ~あ・・・。
【山田】 なんでオレって、女にモテないんだろう・・・。
【金子】 あれ? 山田、何してんの?
【山田】 あ! 金子さん、一人?
【金子】 見ればわかるだろー。
【山田】 ヒマならどこか行く?
【金子】 エー・・・山田と? ありえないっしょ。
【金子】 じゃあ、また学校でね。 バイバーイ♪
【山田】 ばいばー・・・い。
【山田】 ううっ・・・。
【山田】 明るい言動を心がけているのに、どうして・・・モテないんだろう。
【山田】 はあ・・・。
【山田】 あれ・・・?
【山田】 ここ、どこだ・・・?
その路地裏に、小さな店があった。
店には、一枚の看板────。
【山田】 なんだ・・・山田銀行って? それに、この豪華な店内は?
【店員】 お客様・・・失礼いたします。 山田様でいらっしゃいますか?
【山田】 え、ええ・・・。 そうです・・・山田です。
【店員】 そうですか。 それはよかった。
【店員】 さあ、こちらへどうぞ。
【山田】 え・・・でも・・・。
【店員】 心配にはおよびません。
【店員】 お客様が当銀行をご利用なさるのは、はじめてでいらっしゃいますね?
【山田】 ええ、まあ・・・。
【店員】 あちらで詳しい説明をさせていただきます。さあ、どうぞ!
自信に満ちた店員の笑顔を見ていると、断るのも悪い気がした────。
【山田】 山田を・・・預ける?
【店員】 はい。
【店員】 お客様の山田を当銀行にてお預かりいたします。
【山田】 そうすると、どうなるの?
【店員】 お客様は山田ではなくなり、別の姓になります。
【山田】 なると、どうなるの?
【店員】 お客様の望む姓に変更いたします。
【店員】 たとえば、金運をお望みでしたらこちらの「仲野」などはいかがでしょうか?
【山田】 え・・・それって・・・。
【山田】 もしかして、つける姓によって効果が違う・・・とか?
【店員】 そのとおりでございます。
【山田】 あの・・・。
【山田】 女にモテるやつ・・・って、ありますか?
【店員】 もちろんございます!
【店員】 ですが、ひとつ・・・ご注意を。
【店員】 変更した姓は、お客様の・・・山田力とでも言う力によって、復元いたします。
【店員】 そのときには、変更した姓の効果が失われてしまうのです。
そのあとも、いくつか注意が続いたけれど────。
とりあえず試してみることにした。