むぅ……。
夕飯のメニューが決まらない……。
二日続けて同じおかずを出すと、姉さんが怒るしなぁ……。
ごめんなすって! ごめんなすって!
なんだ、玄関の方から声が近づいてくる……?
うわ~ん! ドアが開かないよ~!
……なるほど、不法侵入者か。いいだろう、その挑戦受けようじゃないか。……せいやっ!
うわぁ~! 開いた、開いたよー! もももも、もしかして私、超能力に目覚めちゃった系女子!?
――この長方形系謎物体は、何だ?
酷いですぅ! 私、こう見えても、ぼんきゅっぼんなモデム体系なんですからね!
……そうか、それはさぞ通信速度も速いんだろうな。ところで君に質問があるんだが、いいだろうか?
なんでもどうぞ~。
屋根のある場所とない場所、どちらが好きかね?
私、インドア派なので……。
それじゃあ警察署でゆっくりしてくるといいよ。日本の警察は有能だからね、5分もすれば迎えが来るよ。
え、え、え~~!? 待ってください、やっぱりその、お空が綺麗な外の方が好きかもです!
今、台車を持ってくるから、ゴミ捨て場から見上げる青い空と白い雲を存分に楽しむといい。
いやぁぁぁぁ! 燃えるごみはいやぁぁぁぁぁ!
はぁ。 なんだか相手をするのも飽きたな。
そんな身勝手な……。
……。
え、ちょ、な、なんで私の上に膝を載せて……。
……これでよし。
あ、あれ……ふ、蓋が開かない!?
ガムテープでしっかり密閉しておいたよ。
いやぁぁぁぁ! 暗いぃぃぃぃぃぃ! 狭いぃぃぃぃぃぃぃぃ!
己の罪を悔いて朽ちろ、罪人が。
さてと、晩ご飯の支度しなくちゃ。
ま、待って、ここから出してよ! 私泣くよ、泣いちゃうよ!? ……へ、へるぷ、へるぷみぃぃ!
あ……。
お……おしっこ……したくなっちゃった……。ねえ、ねえ! こ、ここから出して! ねえ、聞いてるよね!?
お、お願いだから……このままじゃ漏れちゃうよ……うぅぅ……。
うぅ……酷いよぉ……ちょっとふざけて段ボールの中に入っただけなのに……。
あう……うっ……うっ……。 ダメ……漏れる……漏れちゃう……。 おもらししちゃう……っ。
あ……っ。
さて、と。夕飯の支度も大体終わったし、そろそろ出してやるか。 ……よいしょ。
ひっく……ひっく……。
……姉さん。
ひぁっ! ち、違うの、私は通りすがりの段ボールガールで、あなたの姉さんじゃないのです!
そうなんだぁ。 なら、この段ボールの底の染みも、僕の姉さんとは関係ないんだね。
も、もちろんだ!
なら、その通りすがりの段ボールガールを追い出さなくちゃね。
……えっ?
当然だろ。不法侵入した相手の家でおもらしする変態は姉さんが帰ってくる前に追い出さなくちゃ。
ちょ……!
さあ、早く出てってもらおう。
やめ、放して! せ、せめて着替えてから……!
アディオス、段ボールガール。
待っ……。
鍵を閉めてチェーンも掛けて……と。
あ、開けて、開けてったら! こ、こんな濡れたスカート履いてたら、近所の人に変な目で……!
姉さんが帰ってくるまで、再放送のドラマでも観てようかな。
……わ……私が……私が、お姉ちゃんです……。
はぁ? 段ボールガールだろ? まったく、変なことを言わないでくれよ。
そ、そんな、置いてかないでよぉ! カムバ~ック!
ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。ピポピポピポピポーン。
はいはい誰ですかー?
お、お姉ちゃんだよ~。
姉さん? 本当に?
も、もちろんホントだよ! 嘘なんてついてどうするのさ! 早く鍵開けてよ!
ふーん。それならいいけど。 よいしょ。
た、ただい……。
ちょ、どうして無言で閉めるの!?
僕の姉さんはスカートおしっこまみれの段ボールガールではないので。
ち、違うよ!? これはおしっこじゃないよ!?
証拠は?
証拠って……。
……ないなら、このドアは開けられないな。
そんな……ひ、酷いよ、お姉ちゃんが何したって言うの……?
……ふぅ、わかったよ。
ほ、ホントに?
ああ。スカートをよこせ。
はい?
チェーンの隙間からスカートを渡せ。本当におしっこじゃないのか確認する。
バカじゃないの!?
それ以外に確認する方法があると?
で、でも、確認してる間、お姉ちゃん下半身パンツだけだよ!?
もし本当にあなたが僕の姉さんなら土下座でも何でもする。だが、それができないなら家には入れない。
お姉ちゃんはお姉ちゃんだよ!! 信じてよぉ!
君に選べるのは、スカートを脱ぐか、そのまま玄関で立ち尽くすかの二択だけだ。
う、うぅ……ぬ、脱ぐよ……脱ぐからぁ……。
ふん。最初から素直に脱いでいればいいんだ。ほら、こっちにそれを渡せ。
は、早く返してね……。ひ、人に見られたら、お姉ちゃん、もうお嫁にいけない……。
……この匂い……そして、この塩気のある味……やっぱりおしっこじゃないか! この変態め!
え、なんで鍵閉め……っ。 スカート、私のスカート返して!
ふん。変態は変態らしく、そうして露出でもしてるといいさ。
や、やだぁ! やだよぉ! こんなの見られたら、お姉ちゃん……お姉ちゃん、死んじゃうよぉ……。
……何か、言わなくちゃならないことがあるんじゃないか?
言わなくちゃならないことって……そんなの、ないよ……。
はぁ……。
……段ボールに入って、僕が夕飯を作るのを邪魔してきたり。
……段ボールガールとか変な名前を名乗って、おもらししたこと誤魔化そうとしたり。
まずは僕に謝らなくちゃならないんじゃないかなぁ?
う、うぅ……ごめんなさい……お姉ちゃんが悪かったです……。
寛大な心で許してあげよう。ほら、鍵もチェーンも外したから早く中に入って。
この変態鬼畜眼鏡ぇぇっ!
ふぐっ!?
は、恥ずかしくて死ぬかと思ったんだから! この、このぉ!
パンツ姿の姉さんに蹴られるご褒美プレイ……がはっ。
うっ、うっ……み、見られた、絶対に近所の人に見られた……。
う、うぅぅ……。 うわ~~~~~んっ!
姉さん……。 ごめんね、やりすぎたよ。 もうこんなことしないから……。
……。
お腹空いた!
……は?
お~な~か~す~い~た~~~! ばんごはん! いますぐ!
……泣いてお腹空かせて駄々こねてって……子供かよ……。
うるさいっ! すぐにごはんつくらないとなく! なきまくる!
はいはい。
いそげ!
(……次はどうやって姉さんをいじめて遊ぼうかな)






