今まで女子にモテたことのない俺。近づいてくるバレンタイン。
一度は女子からチョコを貰ってみたい・・・。
そんな時、俺の家に一通の封筒が来た。
それは進研ゼミだった。毎月同封されている漫画を読むのが、このつまらない人生の唯一の楽しみだ。
今月の漫画の主人公も今の僕と同じ、モテなくて勉強もできない、何のとりえもない男だった。
しかしゼミを始めて、勉強もでき、部活や異性関係にも恵まれ、卒業後は華やかな大学ライフを満喫したという。
何とこの男、受験前のバレンタインに、憧れのマドンナ(後の彼女)からチョコを貰っているという。
そうか! ゼミをやればこんな僕にもチョコをくれる女子が現れるのか!
母さん! 僕ゼミやりたい!
ちゃんと続けられるの? 昔みたいに課題溜めない? 塾の方が良いんじゃないの?
塾じゃダメなんだ! 母さん、僕に幸せになってほしくないの?
そこまで本気なら、やってみなさい。
ありがとう! 母さん!
こうして僕はゼミを始めた。
成績もグンと上がり、難関大も合格圏内と先生に言われ、女子からも一目置かれるようになった。
そんなある日・・・、
さて・・・、今日は図書室でゼミやろう。
図書室で受験勉強? 頑張ってるじゃん。
クラスのマドンナ、野宮伊鈴さん・・・!
あんまり無理すんなよ。ちょっとは頭休ませな。
これ、差し入れね。
うわー、初めて話しかけられたよ・・・。ドキドキしたー。
・・・
これはチョコ!? あの野宮さんから…チョコ?
受験勉強で忘れてたけど、今日はバレンタインだった!
僕の夢が叶った瞬間だった。
女子からチョコを貰う、という目標が達成された僕は、一気に堕落した。
ゼミも手付かずになり、当然難関大も行ける訳なく、進路も決まらないまま高校を卒業した。
母さんは泣いていたが、僕は幸せだ。野宮さんから貰ったチョコは食べず、今も大事に保管してある。