プルルルル
もしもし。
もしもし? 私、カネホー化粧品の白鳥と申します。
今巷で大人気の美白化粧水を、お電話のあなただけに特別価格で提供しているんですよ!
(ちっ、セールスの電話か)
今お母さんいないんでー。
娘さんでしたか。お母様はいつ頃ご帰宅になられますか?
いやー、わかんないっすねー。何せ介護職なんでいつ帰って来られるか。
そーですかー。
・・・娘さん、美容に興味ないですか?
(うわ、私の方に来た)
興味ありますよね? だってお若いですもの。興味あって当然です。ウチの美白化粧水を使うと肌がものすごくキレイになって、イケメンの男の子にすごくモテますよ?
ごめんなさい、興味ないです。ボク、男なので。
え、でも声が女の子・・・
声の高い男の子なんて五万といるだろ! 歌い手なめんなよ!
失礼いたしました。では、またお母様がいらっしゃる時間帯に改めさせていただきますね。
ガチャ。
もうかけてくんなよな。
ザワザワザワ・・・! 背後に誰かいる・・・?!
まことです。
・・・誰?
あなたのまことです。
私、あなたのこと知らない。どこから入ってきたの?
やだなあ。あなたが私を生み出したんじゃないですかぁ。
私、まだ処女・・・。
いえいえ、そういう話ではなくてですね。
私はあなたがついた嘘によってこの世に生命を宿した『まこと』なんです。
私がついた嘘で?
はい、ちなみに私は「お母さんは介護職」という嘘で生み出されたまことです。
確かにお母さんは介護職じゃないけど・・・。
じゃあ何? 私がついた嘘の数だけ、まことも生み出されたってこと?
はい、今の電話であなたがついた嘘は5つ。
なのでたった今まことは5人生まれました。
これからこの家でお世話になります。
お世話になりまーす! お世話になりやーす!
待ってよぉ、いきなりそんなこと言われても・・・。
とりあえずビールで。
僕もビールで! じゃあオレも! オレも! じゃあ5つで。
ちょっと、今ビール切らしてるから無いって!
どもー。まことですー。
また一人増えた。
あれ、僕が生み出されたってことは、今のも嘘ですか。ビールどこかにあるんですね。探させてもらいますよ。
~~~~!
我が家がまことに占拠された。
果たしてどうなる? 続く。
あれ、また僕が生み出されたよ? つまり続きはないんだね?