昔から、何かしら欠如している人は何かしらの能力が高かったりする。 ・・・私もその一人だ
ただ私の場合はその能力が異常であり、また異端であった。
言ってしまえば、なんでもできる。 時を止めようと思えば止められるし、ワープをしようと思えば好きなところにワープできる。
しかし、私はその能力を使ったことがない。 勇気が出なかったからだ・・・
時を止めたとして自分の時間はどうなる?老化が早くなったりしたり、呼吸ができなくなって窒息死してしまうかもしれない。もしかしたら心臓が止まってしまうかもしれない。
ワープにしても私の体を分解してもう一度再構築する?同じ私じゃないかもしれない。 生きてる保障もない。
そう考えると・・・その能力を使う勇気も出ないのだ。 そう・・・私は・・・
勇気が欠如していたのだ。
おっはよー! ゆきりん!元気してたーっ?
あっ!おはよ~ 夏休み明けなのに元気だねぇ~ えらいえらい!
そりゃぁゆきりんの顔が見られるんだから元気じゃないと失礼でしょ!
う、ん? 言ってる意味がよくわかんないけど 元気そうでよかったよ奈央ちゃん
あっ!そろそろ授業始まっちゃうから早く教室に入らないと遅刻になっちゃうよ!
なに!それはいかん!早く教室に入らねば!いくぞゆきりん!
わわっ! はやいよ奈央ちゃ~ん!!
それじゃ授業を始めるぞー 出席確認! 1番浅井!
何とか間に合ってよかったよ・・・
・・・ふわぁぁぁ
ただ夏休み明けって眠いんだよね~
バタッ
・・・・・・
・・・どうしてあそこで前に出なかったの? あなたが前に出ていればうちの子は助かったのに!
お前の名前「ゆうき」っていうんだろ? 引っ込み思案のお前としては名前負けもいいとこだなぁ!
もともとお前には何も期待してなかったさ いつも何もしないでうずくまってばかり の「ゆうき」ちゃん・・・
いたいよぉ・・・!たすけてよぉ!おねぇちゃあああああああああああああああん
お前にそんなに勇気がないとはな・・・ まぁ終わったことだ 気にすることじゃないさ
・・・き!・・・うき!
ゆうき!
わっ! びっくりしたぁ~!
あんたねぇ・・・夏休み明け早々 授業全部寝てんじゃないわよ!
えっ! 授業全部って・・・もしかして・・・
もう放課後よ
うそっ! 私そんなに寝てたの!
そりゃもうぐっすり 挨拶とかもそうスルー いい気なもんよね
久しぶりの学校なのに丸一日 寝ちゃうなんて~!!
まぁいいわ さっさと帰りなさい 掃除の邪魔になるから
あっ! ごめんね! あと、起こしてくれてありがとう!
・・・じゃ! じゃあね!
はいはい さようならー
・・・別にちょっとボケッとした普通の子だと思うんだけどなぁ なにを怖がる必要があるんだか
・・・ばからし
学校始まって早々爆睡とか 恥ずかしいったらありゃしないよ~ はぁ~
おっ! ゆきりんじゃないか!
キャッ!!
おっ 驚かせちゃったかな?
びっくりしたよぉ~ 後ろから急に話しかけないでよ~
あはははっ それは悪かった
それで、さっきはどうして悲しい顔を しておられたのかな?
まさかっ! 悪い男どもに脅されたとか! 学校のやつらにいじめられたとか!
違うよ! 最近はそんなこと全然ないし!
・・・ただ、学校で丸々一日寝ちゃって 恥ずかしいなって・・・
なんだそんなことか 私は授業をまともに受けたことがないぞ!
それって自慢することじゃないよね~
点数がとれればそれでいいのさ!
それでゆきりん、制服ということは学校の帰りかい?
そうだねぇ~ 特に用もないから帰るつもりだよ?
そうか! じゃぁうちに寄って行ってくれないか? おいしく焼けたクッキーがあるんだが・・・
ほうほう!それは美味しそうな話ですな!ぜひとも寄っていくしかありませんな!
よろしい! ではお連れしよう! 私のマイホームへ!
おー!
・・・んぐんぐ やっぱり奈央ちゃんのクッキーは美味しいねぇ
そうかそうか! おかわりはたんとあるぞ! もっともっとおたべ!
わーい!
・・・でもこの量はおかしいよね・・・・ 燃えるごみ袋1袋くらいあるよね・・・
・・・私の家では・・・・そのくらいの 量が・・・普通・・・なのだ・・・
フフフ 3人家族の奈央ちゃんが こんな量のクッキーで普通?
どう考えたって分量ミスとしか 私には思えないよ~?
う・・・う・・・
分量すっごいミスりました・・・ ごめんなさい
作ってる途中でおかしいなとは思ったんだが 作り出したものを途中でやめるわけにもいかんのでな
そのおかげで私はクッキー食べ放題なわけだけど やったー!
ああ! ゆきりんが笑顔なら私の家の物資なぞすべてクッキーに変えてくれよう!
いや、それはおかしいでしょ・・・
もうこんなに暗くなっちゃった・・・ クッキーありがとね~ おいしかったよ~
そういってもらえるとうれしい
しかし本当にいいのか? こんな時間だと不審者が出てもおかしくないぞ?
大丈夫だよ~ 私の家まで街灯びっしりだもん
むぅ そこまでいうのなら仕方あるまい
ではまた明日学校でな! しっかり寝てから学校に来るように
もう! 大丈夫だよ~ たぶん
奈央ちゃんの作ってくれたクッキーおいしかったなぁ
また食べに行っちゃお~ まだたくさん残ってたし!
あっ!
財布がない・・・! 奈央ちゃんの家においてきちゃったかな~?
財布の中に鍵が入ってるから家にも入れないし 取りにもどるしかないか~
ゆきり~んっ!
あっ!あれは・・・ 奈央ちゃん!
手振ってくれてる・・・! 財布落としたの気づいてくれたのかな ?
・・・! 奈央ちゃん!! ・・・・・・・・・・!!
えっ
キキキィィィィィィィ!!!!! ドン!!!!!
奈央ちゃん!! しっかりして!!!
うっ・・・・ ・・・ううう
それから私は・・・ 病院へ電話し、医師さんに奈央ちゃんの様態を聞いた
意識不明の重体だそうです。
私がいけなかったんだ・・・ 私が財布を奈央ちゃんの家に忘れなければ・・・
いや・・・私が奈央ちゃんの家にお邪魔しなければ・・・ 違う・・・
私が・・・私が奈央ちゃんと 出会わなければよかったんだ
そんなことはない・・・
えっ・・・?
ゆきりんは私のクッキーを食べてどう思った・・・?
おいしかった・・・!とても・・・!
私と出会わなければそのクッキーも食べられなかったんだ・・・
ゆきりんは・・・私と友達だったのが嫌だったか?
そんなわけない! 奈央ちゃんは私の唯一の友達だよ!
友達なんだよ! それが嫌なわけがない!
だったら私と出会わなければよかったなんて言ってほしくはなかったな。
・・・ごめん。
それでいいさ ゆきりんはこれから好きに生きてくれ 私は少々休憩させてもらうよ
・・・やだ
むぅ・・・いい感じに持って行けると思ったがむずかしいものだな。乙女心ってやつは
いやだといっても仕方あるまい 私は当分目を覚ますことはない 私に縛り付けられることはない
私が悪いのに!どうして奈央ちゃんが!私が車にぶつかればよかったんだよ!
私が・・・私に・・・『勇気』があれば・・・ あのとき奈央ちゃんに止まってって・・・
私に勇気があれば! 奈央ちゃんだって救えたはずなんだ! どうして・・・・どうしてっ!
ゆきりん・・・いや「有紀」 君は一つ勘違いをしている。
・・・なにそれ
君はもう勇気を持っているはずだ
えっ?
私と友達が嫌かと聞いたとき 「唯一」の友達と言ってくれただろ?
うん・・・言った
私は友達が一人しかいないやつなんて見たことがない。 友達の友達なんてものもあるしな
君は「唯一」といった私以外に友達がいないことを認めているんだ 立派な勇気じゃないのか?
そんなので勇気なんて認めてもらいたくないよ。
ただでさえ勇気がなくて今までひどい目にあってきたんだよ・・・? そんなことで・・・
なかなか強情だな有紀は ・・・はぁ、やりたくなかったが
私は、有紀に勇気が欠如しているなんて思ったことは一度もない! 出会ったころから一度もな!
・・・!!
お前はいじめられているときに私を待っていてくれた!それも勇気だ!
家が火事になった時にもまず最初に妹を連れだして逃げようとしたのも勇気だ!
親に何を言われてもこらえること・・・それも勇気だと私は思う
私が事故に会う直前、名前を呼んでくれたろ?それも勇気だ
君は勇気なんて欠如していない。 ただ普通の女の子だ。 私が証明する
なんて・・・変なこと言いすぎたかな?
・・・ん
ん?
ごめん・・・ 私・・・何もわかってなかった。
自分ができないこと全部勇気が欠如してるって逃げ道にしてた。そんな気がする
ん
私、普通の女の子でいいんだよね
そうだよ? ゆきりんは最初から普通の女の子さ
うん、わかった。
・・・ありがと
意識不明な奴にどんだけ喋らせるんだよ・・・
あとは・・・ゆきりん次第なんだけど・・・
変なことしないでくれよ・・・頼むから
私は・・・全然普通の女の子じゃないよ・・・奈央ちゃん
きっと今なら・・・・ 奈央ちゃんに勇気があるって言ってもらえた今ならできるよね
・・・どうかお願い・・・ 奈央ちゃんの意識が取り戻せますように・・・
3か月後
おはよう奈央っち 元気になったかい
まぁそこそこかなぁ
『剣道で骨折』ってあるんだねぇ あんなに鎧つけてるからすごい頑丈だと思ってたのに
あれでも、小手とか痛いんだぞ? 今回は右手だったから練習できなくて辛かったけどな
ふぅん・・・まぁ無事で何よりだわ 所で、あの例の女の子の話だけど
ああ・・・あの『有紀』とかいったっけ?変な能力持ってるとか言ってる女の子
そうそれ・・・あのこうちの学校の校舎に入り込んでたのよ?ありえない
何か理由があったんだろう・・・ まぁ私には”かんけいない”がな
今度見つけたらひっとらえてやるんだから・・・
・・・これでよかったんだよね
やっぱり私の能力は本物だったんだ
奈央ちゃん・・・ごめんね 私普通の女の子にはなれないみたい
さようなら・・・ 私の・・・「唯一」の友達
おわり






