天野さんは、この世の天気を司る人だ。
彼女が笑えば、燦々と太陽が照りつけ、
彼女が怒れば、たちまち雷雲が立ち込める。
そして明日は水泳大会。
私はカナヅチなので、できれば明日は雨で中止になってほしいな。
だから私は、彼女を泣かせることに決めた。
まず、私は彼女の大事にしている筆入れを隠した。
すぐに天気は曇りになった。
次に、彼女の本に落書きしたり、机やロッカーにゴミを詰めた。
放課後になる頃には、ぽつりぽつりとだが細かい雨が降り出していた。
あと一押し。
とどめに彼女の携帯に匿名で、「死ね」などという中傷メールを何百通も送った。
夜には、窓を叩きつける程のひどい雨になっていた。
この様子だと、明日は雨で水泳大会は中止だな。
でも自分の勝手な都合で天野さんに悪いことしたな。明日学校でちゃんと謝ろう。
翌日。
朝だというのに太陽が一向に出てこない。
雲もない、雨も降っていない、星も月も見えない。空には何も無くただ真っ暗だった。
この事はすぐ各メディアが大きく取り上げ、世界はパニックになった。
新聞の隅っこに、天野さんが自殺したという記事が小さくだが取り上げられていた。