どうして夫を殺したの!?この人殺し!! あんたなんかねぇ…いつか私が殺してやるんだから!!
君にこの男を殺ってもらいたいんだが…できるかい?
俺には…人を斬ることぐれぇしか能がねぇですから。
そうか… よろしく頼むよ。
はぁ…この国もずぶん腐っちまった。
おいそこのお前、見ねえ顔だな。
あん?
ちょっと俺と勝負してくれよ。 退屈でしょうがねーんだ。
別に勝負するのは構わんが…
お前もう…2回死んでるぜ?
なっ…!!
す、すいませんしたあああ!!
やだねぇ…俺も喧嘩売られるほど落ちぶれるなんてよ。
あ、あの…!!
ちッ まだいたのか? 今度は本当に斬る…
ひいいいいいい ご、ごめんなさい!!
(ん?こいつぁ確かあの男の隣にいた…) お嬢ちゃんが俺に何の用だ?
は、はい。 あなたの強さを見込んで、その…依頼をお願いしたく…
おいおい…このご時世、侍に依頼するってぇのがどうゆうことか分かって
分かってます!! どうゆうことか理解した上で言ってるんです!!
…それで、どいつを殺って欲しいんだ?
はい。 この人です。
(こいつぁ依頼主の旦那じゃねぇか) 一体どうして?
はい。この人は私の父です。父は私の恋人の事をよく思っていないらしく、殺そうと企ててるのです。それで、ついに殺し屋に依頼したらしく…
だから、恋人のアキヒロさんが殺される前に父を殺してしまおうと…!
やめだやめだ。 俺にはその依頼は受けられねぇよ。
ど、どうして!? お金ですか? お金ならいくらでも――
俺がその殺し屋だからだ。
!!? そ、そんな…じゃあ私は一体どうしたら…
そんなこたぁ知らねぇよ。 俺は今からあんたの恋人を斬りに行く。恨むなら俺を恨みな。
ま、待って…!!
プルルルルルル
私だ。 そうか、ついに完成したか。今からすぐそちらに向かう。全員そこで待機しとけ。
ククク ようやく地下パイプラインの敷設が終わった。これで少しは密輸も楽になるだろう。
こんにちは、アキヒロさん。
!! だ、誰だお前は!?
いやなに、通りすがりの侍ですよ。
だ、誰に依頼された!?
あんたの恋人の父親。
ちぃ あのじじいか!さっさと殺しておくべきだったなぁクソ!
前々から目障りだったんだよあいつ。すべて見透かしたような目で見やがってよぉ
なぁ、そろそろいいかい?
ま、待ってくれ!!俺を殺したら大変なことになるぞ!? これにはな、多数の与党幹部や軍関係者が関わってるんだ!
もし明るみに出てみろ、それこそこの国は終わりだ! それでもいいのか!?
この国はすでに腐りきってんだ。別に構いやしねぇよ。
そ、そうだ!俺がお前を雇ってやるよ!それで、あいつの親父を殺ってこい。ついでにあいつも殺っちまってもいいぞ。金はいくらでも払う。
あんたがクズでよかったよ。これで心置きなく斬れる…
や、やめ…!
切り捨て御免!
ザシュッ!! うわあああああああああああああ
ふぅ、またつまんねぇもん斬っちまったぜ。
いやぁよくやってくれた。 これを受けとってくれ。
いや、いらねぇや。それで娘さんに何か買ってやんな。
いやしかし…
いいんだよ旦那…いや、次期総理とでも言っておこうか。
庄屋熊五郎 後の第三代内閣総理大臣にございます
ホッホッホ なんのことかね?私はただ、娘のためを思ってしただけだがね?
なにが「娘のため」だ… まぁ、せいぜいその娘に殺されないよう気を付けるんだな。
ホッホッホ お互いに、ね?
ふん
ま、待ちなさい!
おやおや、誰かと思えば…
よ、よくもアキヒロさんを…!優しくてとってもいい人だったのに! この人殺し!!
…それで?
あんたなんかねぇ…いつか私が殺してやるんだから!!
ふん…バカな女だぜ…
そういえば、前にもこんな風に言われたっけか。 まぁでも…
人の恨みを買うのは、もう慣れちまったさ…
――恨み、妬み、嫉み 辛み、苦しみ―― そんな憂き世に生きる、報われない侍の物語でした。 おわり