ねぇ、ユリと遊ぼうよー!
え、お姉ちゃん誰?
怖いよー
知らない人と話しちゃいけないって言われてるので
こ、こら! ユリ、一人で出歩いちゃいけないって言ったでしょう
だって、ユリ退屈なんだもん
娘のユリは高校生だ。
一月前に、「うるせぇな」っと言って家を出て行ったきり、行方不明になっていた。
それが神社の社で見つかって保護されたというので迎えに行ったら、ユリの心と記憶は昔に戻っていた。
ねぇ、ユリ、たっくんと遊びたい。たっくんの家行っちゃダメ?
ほら、約束もしてないのに急に押しかけたら、達也くんにも迷惑になるでしょう
大丈夫だもん。たっくんはいつもユリと遊んでくれるんだよ!
心と記憶が戻ってしまった事に最初は戸惑っていたけれど、次第に懐かしく嬉しい気持ちが沸き起こっていた。
ユリちゃん、ママと遊ぼっか。ほら、ユリちゃんは、ママのこと嫌い?
ううん! ママ大好き!! 優しくていっぱい遊んでくれて、ユリ、ママのこと好きだよ!
反発ばかりしていた娘が、懐いてくれている。それだけで、涙が出そうなくらいに嬉しい。
でも……。
ほら、そんな所で寝てると風邪引くよ
その、昨日は言い過ぎて……ごめん
え、もうそんなの着るような歳じゃないよ
寂しい。 一緒に暮らして、喧嘩したけど一杯話して、笑って泣いて……そんな記憶も全部無くなってしまった様で寂しい。
神様、ごめんなさい。『ユリが昔の様に良い子に戻りますように』なんてお祈りしておいて、こんなこと言うなんて……。
でもどうか神様、ユリを元のあの子に戻してください
その瞬間、世界が白く霞んで目の前が歪んでいくような感覚に襲われた。
ちょっと、またそんな所で寝て。大丈夫なの?
ユリ?
はぁ、やんなっちゃう。化粧も落として無いし。ほら、朝ご飯作っておいたから、よかったら……食べたら……
ユリ!!
ちょっといきなり抱きつかないでよね!
あの頃とは変わってしまったけれど、やっぱりユリは私の子供でとってもいい子だ。