・・・・・・。
・・・・・・。
(はぁ・・・・・・やっちまった。高校デビューで髪を青く染めてみたけど、みんなドン引きで誰も目を合わせてくれない)
知り合いすら目を合わせてくれない。
……。
(個性が大事と言われる社会でも、結局は普通が一番なんだよな。大人の嘘に騙された僕の完敗さ)
(はぁ……なんでこんなことに)
(・・・・・・。あ、まずい。周りは友達が出来始めてるみたいだ。)
(完全に俺だけ孤立しちゃったよ・・・・・・。くそ、なんで皆あんな風にすぐに友達が出来るんだ)
(あぁああああしかもみんなこっち見てるぅううう!)
(ちがう、そういう注目じゃないんだ!)
(見世物として笑われるためじゃない、ただ特徴が欲しかっただけなんだ!)
(くそぉおおお!見るなああああああああああ!そんな目で俺を見るなあああああああああ!)
ひそひそ クスクス
(死にたい・・・・・・死んでしまいたい・・・・・・)
(もうやだ。早くホームルーム始まってくれ!皆の意識が先生に向いてくれ!)
ヒソヒソ クスクス
制服着ろおおおおおおおお!
あん?
あ・・・・・・(やべえええええええええ!聞こえちゃったあああああああ!うわあああああああああ!うわああああああああああああああ!)
おい、おまえ今なんつった?
(どうしようどうしようどうしよう。というかこいつよく見たらちゃんと制服着てるよ。なにあれ、肩に乗ってるのなにあれ)
制服着ろって言ったろ?
は、はい。言いました
けど、すいません。ちゃんと着てましたね。すいません、全然気付かなくて……。
……
おう
え、なに。せ、制服。あの、・・・・・・え、気付かなかったの?
(口ベタだこのひとおおおおおおおおおおおお!超口ベタだあああああああああああ!)
(すげええええ俺より口ベタな人初めて見たぁああああああああ!すっげええええええええ!)
うん。あの・・・・・・その、紫のが肩に乗ってたから、ジャンパーに見えて。
あ、あー。これね、これが、ジャンパーに。あ、そう、ふーん・・・・・・。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
俺は吉川 晃、よろしくな
(ここでええええええええ!?)
僕は市原 由紀斗、よろしくね。
へー、いちかわ ゆきとか。そうなんだ。古風な名前だな
え・・・・・・? あ、そうかな。 いや、そうでもないけど・・・・・・。
へ、あ、そうなの!? あ、そうなんだ。あ、お前のところではそういう感じなんだ。
いや、それは全然いいんだよ? 人それぞれだし、やっぱそういう、ローカル?なところがあっても全然かまわないし。
むしろそういう違いがあってこそさ、繋がりっていうことにも意味があるわけじゃん?
前々からそういうことは思ってたし、別に今考えたとかじゃないんだけど、まぁそういうのもいいかなって思って。
うん
(やばい、この人テンパってて自分でも何言ってるかわかってない)
・・・・・・確かにそうだね。すごいな、そんなこと今まで一度も考えたことなかったよ。
ダンボールやるよ
(話繋げろおおおおおおおおおおおおおおお!)
(全然会話成立してないし、もうこの人だいぶ限界だ・・・・・・。汗がビッショリだもん)
(たぶん何話してもまともな軌道には戻せないぞ・・・・・・)
朝ご飯なに食べた?
ばあちゃん家がミカン作っててさ
(ほらああああああああ!)
(駄目だもう。話聞けてないよこの人、まだダンボールから話広げようとしてるよ)
へぇ、良いダンボールだね。
そうでしょ!? ね? いや、うん、俺も前からそう思っててさー!
あはは・・・・・・
(・・・・・・いや、けど)
(悪い人では・・・・・・なさそうだな)
(よく見たら髪の色と紫の以外は全然普通だし。髪についてるアスパラガスはちょっとよくわかんないけど)
(けど、それ以外は普通に良い人だよな。表情もよく見たら穏やかだし)
(ちょっと挙動不審なだけの・・・・・・)
・・・・・・
・・・・・・ん?
・・・・・・ぉ?
ひょっとして、その髪と紫のって
その青い髪の毛って・・・・・・
二人「「高校デビュー!?」」
二人が同時に発した声は教室中に響き渡り、のちの彼らのアダ名に大きな影響を与えることになるとは、今はまだ誰も知らない。
つづく (続きは作者コメント欄から)